第11話「迷子」
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愛いですよ」
まるでデートのような様相をみせる二人に、彼女達は一様に顔を付き合わせた。
「「「これって、デートじゃないの……?」」」
ワーワーギャーギャーと騒ぎつつもとりあえずは尾行を開始する3人だった。
タケルが突然呟いた。
「困った」
無表情で感情のこもっていない声からは全くそう感じさせないのだが、実は本当に困っていた。
――迷った。
マユと共に交番を捜し歩いて約20分。適当に歩いている人に交番の場所を尋ねて、その通りに歩いた筈なのだがなぜか見つからず、気付けばここがどこかすら分からなくなっていた。
「……ん」
クイクイと引っ張られてマユのほうを見ると、ジッとタケルの顔を見つめていた。
「どうした」
「おなかすいた」
しょぼんと顔を俯かせる。その言葉がか細くて、体の何かが反応したのだろうか。なぜかタケルの腹からもグ〜〜と聞こえてきた。
「む」
自分でも驚いたように目を見開くタケルの顔を見つめていたマユが困ったような顔をして、自分のポケットとタケルの腹に何度か視線を往復させる。少しの間そうしていたが、やがて決心したのか、ポケットから飴を一つ取り出した。
「おにいちゃん、はい」
「……くれるのか?」
「わたしのたからもの。おにいちゃんだからあげるね?」
まだ舌足らずな声で、言う。自分が空腹の時には食べようとしなかったその「たからもの」を渡そうというのだろか。唖然としたタケルに、マユは笑う。
「おにいちゃんにわたし、ごめいわくだから。ありがとうとごめんなさい」
「……っ」
何と、純粋な。そして何と優しい子なのだろうか。訳もなく泣きそうになったタケルは慌てて空を見上げて相変わらずの無表情で、だがどこか優しさの感じられる声色で言う。
「いや、俺はいい。それはキミの宝物なんだろう。大事にしておいたほうがいい」
「え……いいの?」
子どもは良くも悪くも正直だ。あげなくてもいいといった途端にホッとした様子を見せた。しかしそれでは気が済まないのだろう、すぐに困ったように「でも」と俯く。
さらに何かを言おうとしている。気付いたタケルが言葉を発することによってそれを遮った。
「――じゃあ、頼みがある」
「え?」
たのみ? と首をかしげた。マユに1000円を渡して、目の前にあるクレープ屋を指差す。
「俺の分とキミの分。2人分を買ってきてくれないか? 俺は腹が減って一歩も動けないようだ。買って来てくれたらこれほど助かることはない」
「……」
お金とタケル、そしてクレープ屋。次々と顔を変えて最後にマユは嬉しそうに頷いた。
「うん、いってくるね!」
僅か5Mほどの近場
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