第百三十六話 思わぬ助けその八
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松永はそれを耳に入れたうえでこう言ったのである。
「それがしは右大臣様の使者であります」
「何と、貴殿だけで来ておらんのか」
「そういえば右大臣様は今金ヶ崎から退かれているが」
「もうここに来ておられるのか」
「それでは」
「朽木殿には右大臣殿の名代としてお話をしたいのです」
ここでこう言った松永だった。
「宜しいでしょうか」
「どうする、右大臣様の名代というぞ」
「ではここは通すべきか」
「うむ、例え悪弾正といえど右大臣様の名代ならな」
「それならのう」
彼等も信長の名前を出されては考えた、そしてだ。
暫く話し合ってからそのうえで言った。
「では門を開けるか」
「うむ、殿の御前に案内しよう」
「悪弾正じゃ、安心は出来んがな」
「それでもな」
こう話してそうしてだった。
彼等は遂に門を開けた、そのうえで。
松永を砦の中に入れ朽木のいる櫓に案内した、朽木は櫓の奥の主の間に厳しい顔で座っていた。
具足を着けた大柄な男だ、顎には濃い髭がある。その朽木が松永を見てこう言ったのだ。
「松永殿、お久しいですな」
「そうですな、お元気そうで何よりです」
「して今日は何の用で来られた」
朽木はにこりともせず松永に問うた。
「一体何用か」
「はい、実はこの砦に殿をお通ししてです」
「右大臣様を」
「それでお守りして都まで共に来て欲しいのです」
松永は穏やかな笑みで朽木に話した。
「そうして頂きたいのです」
「つまりわしに右大臣様の家臣に完全になれと」
「はい」
その通りだというのだ。
「そうして頂けます」
「確かにわしは近江の国人じゃがその領地は右大臣様に安堵してもらった」
近江の南の国人は皆そうだ、誰もがそうした形で信長の家臣になっているのだ。
しかしだ、今はなのだ。
「じゃが今右大臣様は」
「退いておられます、都まで」
「金ヶ崎からですな」
「して今この砦の傍におられます」
具体的な場所は言わないがそこにいるというのだ。
「すぐそこにです」
「左様でありますか」
「そうです、、それでなのですが」
「しかし織田家は負けたであろう」
退きがその証拠に他ならない、このことは否定出来ない。
「それで今浅井殿と朝倉殿の軍勢に追われているというが」
「それは確かです」
「ではこのまま織田家は滅ぶのではないのか」
朽木は険しい顔でこう言った。
「都に戻れぬまま」
「その軍勢は健在ですが」
無事退いているというのだ。
「十万を超える兵はほぼ無傷です」
「十万・・・・・・」
「徳川殿の兵を入れますと十一万です」
それ程にまでなるというのだ。
「その軍勢、そして家臣の方々もです」
「健在というのか」
「左様です」
この巨大
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