第8話 「こどもの名前」
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さい、皇太子殿下の贈り物として、銀のスプーンをお持ちくださった。
メッセージカードには、マクシミリアン・ヨーゼフ・フォン・ベーネミュンデ。と書かれている。
マクシミリアン。
皇帝陛下がお付けになられた、この子の名だ。
しかしまさか、皇太子殿下が、この名をお認めになるとは思っていなかった。
反対するだろうと、侍女達ですらひそひそと話をしているのも、知っていた。
晴眼帝
再建帝
と呼ばれる名君の名前なのだから……。
この名をつけるということは、帝位を争うつもりがあると、そう受け取られても否定し切れない。
陛下にもっと平凡な名をつけてほしいと、懇願したい気持ちがあった。
あの皇太子殿下と帝位を、争うつもりは、私にはなかった。
とても勝てるとも思えない。
「マクシミリアン・ヨーゼフ様の後見人は、皇太子殿下がなられると、恐れ多い事ながら、陛下と殿下が、お決めになられたそうです」
「まさか……それはまことですか? まこと、皇太子殿下が、そう仰られたのですか?」
リヒテンラーデ候はわたくしの前で、頷きました。
その時、わたくしの目から、涙が溢れてしまったのです。
「皇太子殿下のお言葉を申します。
マクシミリアン・ヨーゼフ・フォン・ベーネミュンデをかの名にふさわしく、育てるように。
とのお言葉です」
「確かに承りました……殿下によろしくお伝え下さい」
リヒテンラーデ候が屋敷から立ち去ったあと、わたくしは急いで、マクシミリアンの下へ駆け寄りました。
すやすやと眠る我が子を見ながら、再び涙が溢れます。
「マクシミリアン。聞こえますか? あなたのお兄様はあなたをお守りくださると、そう仰ってくださったのですよ。良かったですね」
■ノイエ・サンスーシ 薔薇園 フリードリヒ四世■
シュザンナに子が生まれた。
男の子だ。
名をどうしたものかと考え、ルードヴィヒを呼んだ。
「シュザンナの子の事じゃが……名をどうしたものかと、な」
「マクシミリアン・ヨーゼフ」
「ルードヴィヒ? 本気か」
「これからどうなるかも分からん。あの子が育つかどうかもな。だが、一つ言えることは、どうなろうともあれは、俺の弟だ。あいつがまともに育ってくれたら、俺と同じように帝国を背負う事になる。その為にもしっかり躾けておいてもらわないとな。肉体的にも、特に精神的にもだ」
「本当に良いのか?」
「ああ、あいつの後見人には俺がなろう。できるだけの事はしてやるさ」
ルードヴィヒがそう言って笑う。
強いのう……。
立ち去る間際、ルードヴィヒが振り返り、にやりと笑った。
「ああ、そうそう。俺にはあと二人、弟みたいな奴らがいるんだ。金髪と赤毛の、な。マクシミリアンが、あ
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