崑崙の章
第19話 「一つ、我らは民の笑顔ために!」
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う飛んでったぜ」
「じゃあ、すぐに収まるな……さあ、いらっしゃい!」
と、本来ならば大騒ぎになるか、被害を恐れて皆隠れるように立ち去るかなのに。
この街では、すぐに問題がなかったかのような賑わいを再開させる。
そして喧嘩していた現場に駆けつけてみれば、すでに何事もなかったかのように後片付けも終わり、野次馬すらいなかった。
ただし、喧嘩していたであろう、血の跡だけが少し残っているのがわかる。
それも一人の警備兵……いや、警官が水の入った桶を持って、その場所に水を撒くと何事もなかったかのように綺麗になる。
(……なんということだ。ここは一体……)
外部から来た人間は、大抵その様子に驚き、周囲に聞いて回る。
こんな治安の良さは、現在の大陸すべてを見てもここにしかないといえるからだ。
その人々も、この漢中に数日もいれば、その光景にも慣れて享受するようになる。
安全が金をかけずに得られる街。
この街への居住希望者は後を絶たない。
だが、現在はまだ漢中に住める建物は少ない。
為政者である劉備は、大急ぎで街の整備を行っているらしい。
それも、今までの無秩序な整備ではなく、四方を区切り、大通りを設備し、住民区、商業区、工業区など、それぞれの担当地区すら大々的に移動させた。
その建築にも割普請という、工匠を分担させて競わせるという方式をとるために、建築の速度はおどろくほど早い。
それでも元から漢中に住んでいた住人の家を再優先として、次に商業、工業区としているために、新規居住者の家は遅れている。
だが、そこに許可無く居住しようとすれば警官が飛んできては、職業斡旋所というところに連れて行かれる。
そして能力ごとに割り振られた地区へ住み込みで弟子入りさせるか、農邑へ移住を勧められる。
そのため、無秩序に浮浪者がうろくつことはなく、街は仕事を覚えようとする者の熱気に溢れ、漢中周辺の農邑では開拓・開墾が盛んに行われていた。
何しろ、この州では今、農業生産を奨励しているのである。
新たに特産となった、じゃがいも。
これは、植え付けてから九十日で収穫可能という、とんでもない早さで栽培できる。
冬から春になる頃に植えれば、夏になる前には収穫できようというもの。
それも一つの種芋を四分割して植えるそうだが、一つから四つぐらいの量が取れる。
つまりは、たった一つから一六個も作れるというのだ。
しかも一年に二回も収穫できる。
それだけでも、相当な量となる。
本来ならば、おおよそ六割から七割ほどが税として搾取される事が多い。
幽州など七割五分……非道と言ってもいい。
曹操が治める陳留では屯田兵なる制度により、俸給を出す代わりに作物一切
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