暁 〜小説投稿サイト〜
私立アインクラッド学園
第二部 文化祭
第19話 喪失
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った。
 この世界において、飛竜にまたがり、空を飛翔することが許されているのは──。

「キリト、整合騎士だ!」

 ユージオが裏返った声をもらす。
 飛竜はこちら目掛けて一直線に落ちてくる。

「チッ!」

 和人は舌打ちと共に、アリスに腕を回して地面に転げた。
 同時に、和人たちの前に整合騎士が降り立った。

「クソッ!」

 和人は言うと、なおも走り出そうとした。
 しかし、『世界最強』と言われている整合騎士を目の前に、逃げ切れるはずもなく──。
 瞬く間に追いつかれ、和人はアリスからひっぺがされた。

「キリトッ!」

 アリスが悲痛な叫びを上げる。
 整合騎士は、聞いたこともない神聖術のスペルの高速詠唱を開始した。

「うっ……!」

 スペルが唱えられた途端、和人は苦しそうに地面に手をついた。

「や、やめて! この人は、何も悪くないの! わ……わたしがおとなしくついていけばいいんでしょう!?」
「駄目だアリス、俺のことはいいから……早く、逃げ」

 整合騎士が再びスペルを唱え、和人の言葉は余儀なく中断された。和人は歯を食い縛りながら、ユージオに向けて言う。

「ユージオ、行くんだ。アリスを連れて……逃げろ」





 逃げる?





 アリスと一緒に?





 そうしたい。





 けど





 ──できない。





「ユージオ!」

 和人の声が、だんだん遠くなる感覚。
 ──僕は、キリトみたいに強くない。

「ユージオ、早く!」

 無理だよ、キリト。

「ユージオ──ッ!!」

 和人は最後に叫んだ瞬間、気を失った。整合騎士がなんらかの神聖術を使ったのだ。
 騎士は言う。

「アリス・ツーベルクを、法律条項抵触の咎により捕縛、連行し、審問ののち処刑する」

 ──整合騎士は、この世界の秩序を守る、良人たちだと思っていた。
 しかし、ユージオは初めて公理教会に疑問を抱いた。
 和人を、アリスをこんなにも苦しめ──傷つけることのどこに正義がある?

「先程、桐ヶ谷和人のアリス・ツーベルクに関する全ての記憶を封じた」

 一瞬、この騎士がなにを言っているのか解らなかった。
 ──キリトから、アリスについての記憶を消した?
 アリスの瞳が小さく揺れた。
 しかし直後、気丈にも微笑んだ。

「これで……これでいいのよ。これでもう、キリトがわたしのせいで傷つくことはない」

 アリスの瞳はまだ揺れていた。しかし確かな意思を秘めていた。無限の慈愛に溢れていた。
 アリスに幾重もの拘束具が取り付けられる。
 整合騎士の腕が、ユージオにも
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