第三十九話 読書感想文その二
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「読書感想文に使えるわよ」
「読書感想文ってどの作品でないといけないってことはないのね」
「そうよ、極論すれば外国の文学でもいいから」
「外国のもなの」
「そう、アメリカでも何処でもね」
「そういえば私子供の頃アンデルセンの童話を読書感想文に選んだわ」
そして書いたというのだ。
「人魚姫ね」
「ああ、あれね」
「人魚姫凄く可哀想よね」
「そうよね、私あれ読んで泣いたわ」
「私もよ」
琴乃は里香に答えた。
「綺麗な作品だったけれど」
「とても悲しいわよね」
「うん、凄くね」
こう二人で話す。
「声も捨てたのにね」
「王子様と一緒になれないで」
「アンデルセンの童話って悲しいお話が多いけれど」
「あれは特にね」
悲しかったというのだ、人魚姫は。
「私も読んでて泣いて」
「そうよね」
「それを考えたら外国の作品でもいいのね」
「そう、例えば若草物語でもね」
里香は例えとしてウォルコットのこの名作を出した。
「いいのよ」
「若草物語ね」
「あれでもいいのよ。勿論他の作家の作品でもね」
「赤毛のアンとかでも」
「そう、いいのよ」
ウォルコットはアメリカの作家、モンゴメリーはカナダの作家だ。赤毛のアンの舞台は実はカナダであるのだ。
「けれどどっちも結構長いから」
「それでよね」
「そう、今はね」
どうしてもだというのだ。
「あまり時間がないから」
「夏休みも残り短いから」
「短い作品を読んで書かないといけないから」
だかだった、琴乃は今はだ。
「短い作品にした方がいいわ」
「それでこの美食倶楽部なのね」
「それだと読むのもそんなに時間がかからないから」
「そこから一気に書けるのね」
「そう、それに書きやすいから」
読書感想文をだというのだ。
「独特の作品だから」
「じゃあ読んで一気に」
「書けると思うわ。琴乃ちゃん書くのは速い方かしら」
「どうかしら。一日で五枚だけれど」
「それ位だったら充分よ」
書けるというのだ、充分。
「じゃあ読んだらね」
「一気にね」
「そう、書いてね」
「そうするわね。美食倶楽部ね」
「谷崎の作品は問題作も多いけれど」
これは初期からだ、発禁処分になった作品もあれば国会で芸術か猥褻かと論議になった作品もある。ただの文豪ではないのだ。
「この作品はまだね」
「問題作じゃないのね」
「そうなの」
だからいいというのだ。
「少なくとも電車の中で読んでいて年配の女の人に嫌な顔をされることはないから」
「谷崎ってそういう作家さんなの?」
「ううん、そういう話聞いたことがあるのよ」
谷崎の作品を電車の中で読んでいてだというのだ。
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