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万華鏡
第三十九話 読書感想文その一
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                第三十九話  読書感想文
 琴乃は景子の家での夏祭りの次の日はその神社で五人で掃除をした、その日は幸い部活も塾も休みだった。
 それで午後に里香の家に行こうと思った、そのことを里香に言うと快諾してくれた、それで午後は彼女に家に行くとだった。
 まずは麦茶を出してもらった、二人でそれを飲んでからだった。里香は琴乃の前にあるものを出してきた。それは一冊の本だった。
「これなの」
「ふん、この本になのね」
「そうなの、その美食倶楽部って話があるから。他の本にはね」
「どんな作品があるの?」
「怖い話のところには志賀直哉の変わった作品があるのよ」
 それが収録されているというのだ。
「剃刀っていってね」
「散髪屋さんのお話?」
「そう、それがね。志賀直哉って私小説だけれど」
 このジャンルで有名な作家だ、だがその作品はというのだ。
「怪奇ものなのよ」
「そうなのね」
「そう、最後散髪屋さんがお客さんの首に剃刀を当ててね」
 そして何をしたかというと。
「それで一気に切るのよ」
「一気に、なの」
「それがその小説なのよ」
「何か本当に怖そうね」
 殺人を扱った作品だ、これが怖い筈がなかった。
 だが、だ。琴乃はその話を聞いて首を傾げさせて里香に問うた。
「けれどそれって」
「志賀直哉らしくないっていうのね」
「教科書で城の崎にてってあったじゃない」
 現国の授業だ、そこで志賀直哉についてある程度知ってはいた。だがその剃刀という作品は、というのだ。
「何か違う気がするけれど」
「志賀直哉らしくないっていうのね」
「志賀直哉ってホラー書く人だったの?」
「いえ、その作品だけなのよ」
「剃刀だけなの」
「そう、怖い作品はね」
「そうだったのね」
「あの人の作品は短編が多くて数は読めるけれど」
 暗夜行路だけは例外だ、この志賀直哉の代表作は彼の作品にしては例外的に長いのだ。ついでに言えば私小説でもない。
「それでもね」
「剃刀だけはなの」
「私がこれまで読んだ志賀直哉の小説の中では」
 その剃刀だけはと、里香は話していく。
「違うの」
「異色なのね」
「だから目立つの」
「成程ね」
「読書感想文それでも面白いと思うけれど」
 里香はこうも言った。
「どうするの?」
「ううん、私ホラー小説も好きだけれど」
 だがそれでもだとだ、琴乃は里香に答えた。
「もう決めたから」
「美食倶楽部にするのね」
「うん、それでね」
 谷崎潤一郎のその作品にするというのだ。
「そうするわ」
「わかったわ、それじゃあね」
「ええ、有り難う」
 里香からその本を受け取った、そしてだった。
 その美食倶楽部のページを開いて少し読もうとした、だがここでだった。
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