第一物語・後半-日来独立編-
第四十七章 火炎の鳥《3》
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メートル程度であれば一秒は掛からないで御座る」
「魅鷺殿だけが、系術を持ったわけでは御座らぬよ」
言う介蔵は、攻める魅鷺の攻撃を弾いて、魅鷺本体を風で吹き飛ばした。
風には威力は無い。ゆえに痛みは無く、なんともなく魅鷺は着地する。
隙は十分だった。
まるで台風が来たような、強い風が魅鷺を襲った。
足で地面を掴み、姿勢を前屈みにするが力を一瞬でも抜けば後ろへと吹き飛ばされそうだ。
風に巻かれ、飛ばされた砂利が身体を打つ。
腕を目の前に交差させ、土煙から目を守る。
それは視界を狭める行為であって、取る行動としては得策ではなかった。
「隙あり――!」
「あっ!」
交差させた腕に、強烈な拳による打撃が当たった。
次の瞬間、身体は吹き飛ばされて地面の上をなんかいか回転した後止まる。
判断を間違えてしまった。
自身が取った行動をそう判断し、頬に付いた汚れを左手で拭う。
「行くで御座る!」
土煙が漂う正面。
流れる土煙を横に真っ二つにするかのように風が来た。
ただの風では無い。
だから魅鷺は背を低くし、横に長い風を避けようとした。
姿勢を低くする際に魅鷺の髪は舞い上がり、ポニーテールの先を魅鷺の上を通り過ぎる風が切った。
「な、何事に御座るか」
髪先だが、風に切られたのは解った。
風が髪を切るなど、日常ではあり得ないことだ。
落ちる髪の重みを感じながら、正面の土煙を消し飛ばす者を見た。
葉隠・介蔵。
だが、今の彼には風がいた。
介蔵の身体に、密着するように風が吹いていた。
彼が地面に足を置けば、そこにあったものはなびくか、転がるか、飛ばされた。
「神化系術“御風神|《シナツヒコ》”。かの御雷神|《タケミカヅチ》と対となる系術で御座る。親がイザナギとイザナミ以外は風神雷神の名でしか繋がりは持たなかったようで御座るな。特別仲がよかったわけでもなく、言わば遠い兄弟で御座る。ちなみに御風神の方が兄で御座るよ」
「いやはや、イザナギは拙者かなり嫌いな神で御座る」
「しばしの休憩がてら何ゆえ?」
「子を産み、亡くなったイザナミに逢いたいと思う心はのし。しかし、亡きイザナミ……ん? 確かこの時は別の名で呼ばれていたで御座ったな。まあ、それはさて置き、会った途端に生きていた時とは違う姿に恐れ逃げ出したのはみっともないで御座る。後にイザナミはヤンデレ化してしまったで御座るし、イザナギはとても情けないで御座るなあ」
「これは確かに。しかし当時の者の気遣いで一緒に葬|(はぶ)り祀られた時によりを戻したようで、仲良くやっていると思うで御座るなあ」
「ならば一安心。ところで介蔵殿、何やら変わった様子で御座るな」
今更気付いたのかと、ツッコみたくなったが介蔵は堪えた。
辰ノ大
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