第二幕その三
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第二幕その三
「あの人。とても」
「とても利発そうだね」
「ええ。気も利きそうで」
彼女の頭の回転の速さをもう見抜いているのだった。
「ああいう娘と一緒になりたいものです」
「シェラスミンとはお似合いだね」
彼等も彼等でそんな話をしていた。その中で玉座に座る太守がゆっくりとした口調で言ってきたのであった。
「ここに来たということはだ」
「はい」
ヒュオンが恭しく一礼してから彼に応えた。この時の礼を見て太守はすぐに言ってきた。
「待て」
「どうされたのですか?」
「何故その礼をする」
重厚な声でヒュオンに問うてきた。
「何故フランク式の礼をするのだ?」
「しまった」
ここでこのことに気付いて内心舌打ちするヒュオンだった。
「つい。出てしまった」
「しかもだ」
太守はさらに言ってきたのだった。
「そなたの髪と目の色はだ」
「迂闊でした」
今度はパックが言った。
「そこまでは配慮が行き届きませんでした」
「我等のものではない。フランクのものだな」
「それは」
「そうか。フランクの密偵か」
太守は彼の作法と姿からそう判断したのだった。
「娘を奪いに来た。そうだな」
「いえ、違います」
ヒュオンは必死の顔でそれを否定した。
「僕は確かにフランクの者です」
「それは認めるのだな」
「ギエンヌ公爵のヒュオンです」
今己の名を名乗った。
「それが私の名です」
「聞いたことがある。フランクの将軍の一人だな」
太守は彼の名を聞いてさらに告げてきた。
「我がイスラムの軍勢を散々に破った」
「だが今の僕はレツィアを妻に迎える為にここに来ました」
毅然と顔をあげたうえでの言葉である。
「ですからどうか姫を僕に」
「ならん」
太守の返答は一言だった。
「そなたの神はキリストだな」
「はい」
「そなたがアッラーに仕えるのなら何の問題もなかった」
こう言うのである。
「しかしキリストに仕えるのなら娘をやるわけにはいかぬ」
「くっ・・・・・・」
「帰るのだ」
またヒュオンに対して告げた。
「よいな」
「そんな、御父様」
レツィアも今の状況に慌てて父に対して言ってきた。
「そんなことをしたら」
「では聞こう」
太守は今度は娘に顔を向けて問うてみせた。
「御前はキリスト教徒と結婚できるのか?」
「それは・・・・・・」
「できるというのなら去れ」
厳しい声で告げるのだった。
「このバグダットをな。よいな」
「おかしな話です」
一連の話を聞いていたパックがここで言った。
「それが何だというのでしょう」
「何っ!?」
「仕えている神なぞ何の問題もありません」
彼はこう太守に対して言うのだった。
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