第二部 文化祭
第16話 気持ち
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「キリト? どうしたのよ」
俺の前に、仁王立ちする華奢な少女がひとり。
癖のない金髪を、小さな顔の両端で流し、青い瞳は無限の空のように深く、綺麗に輝く。
1年生にして、アインクラッド高等部生徒会長を務めている彼女──アリス・ツーベルクは、神聖術の天才である。
「あのさ、アリス。頼みごとがあるんだけど」
「だからなによ。わたしにできることかしら?」
「ああ、できるだろうな」
「ふーん……仕方ないわね。言ってみなさいよ」
つんとすました笑みを浮かべるアリスの頬は、何故だか赤くなっている。
「……神聖術を使ってほしかったんだけど……アリス、なんか顔赤いぞ。熱でもあるんじゃないのか?」
「ちょっ……額触らなくていいから! 熱なんてないわよ!」
アリスはますます赤くなると、俺の頬を音高く叩いた。
「な、なんだよ。せっかく人が心配して」
「心配なんて要らないわよバカ! それに、熱なんて神聖術でいくらでも治せるし」
……また女の子にバカって言われたぞ……。
「あんたと話してると、ほんとに熱が出てきちゃうわ。ねえ、アスナ」
「うん。わたしもキリト君見てると熱が出ちゃいそうだよー」
「あんまり言うと、俺泣くよ? 泣かせたいの?」
アリスはふふんと不敵な笑みを浮かべて言う。
「キリトの泣き顔って、超レアよね? 幼なじみの私でも、ほとんど見たことない気がするもの。妙な意味じゃなく、普通に見てみたいわ。写真撮って大量に焼いて、校舎の屋上からばら蒔くの」
「勘弁して下さい……」
俺はとりあえず脱線した話列車をもとのレールへ戻すことにした。
「……で、その熱だっていくらでも治せちゃう神聖術のことでお願いがあるんだけど」
「なによ?」
俺は一通り説明する。
聞き終えたアリスが溜め息を吐いて言った。
「そんなのお安いご用よ。けど、アルヴヘイムとか……異世界に行って魔法使うってテもあったでしょ? 相変わらずバカなんだから……」
俺って、そんなにバカなのか。
「いいわよ。じゃあまず、誰から?アスナから?」
「お、俺は?」
「なによ、自分の心の中なんて見てほしいの?」
「いや、そういうわけじゃ」
「あなたのことなら、幼い頃からよく知ってる。わざわざ神聖術使う必要なんてない」
「そ、そうか……」
得意気に微笑んだアリスは、アスナの前に手を翳すと、「コール」とはっきり神聖術の冒頭句を口にした。彼女の声はよく通る。
神聖術のスペルを噛まずに高速詠唱したアリスは、苦笑いしながら「なるほどね」と呟いた。
「じゃ、歌詞の参考になる程度に、アスナの気持ちとかを桜さんに流し込むわ」
再び高速詠唱が開始され、瞬く間に終了する。
なにを
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