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オベローン
第一幕その五
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と笑ってみせた。そうしてそのうえでまた少女に言うのだった。
「そうですか。レツィアお嬢様もそんな御歳になられたのですね」
「おかしいかしら」
「おかしいとは申していませんよ」
 優しい笑みで彼女に告げるファティメだった。
「むしろ素晴らしいことですよ」
「素晴らしいのね」
「人は恋をするものです」
 ファティメはまた言ってきた。
「恋をしないといけないものです」
「恋をなのね」
「はい。そして夢を御覧になられたのですね」
「そうなの」
 またファティメに答えるレツィアだった。
「夢であの人に出会えたのよ。夢だけれど」
「夢だからこそですよ」
 ファティメは今度はこんなことを言うのだった。
「夢だからこそいいのです」
「夢だからいいというの?」
「夢はですね」
 さらに優しい笑みになってレツィアに話してきた。
「現実になりますから。夢と現実は裏返しですからね」
「そう。だったら」
 ファティメの今の言葉を聞いてレツィアの顔色が一変した。それまで物憂げだったものが晴れやかなものになる。そのうえで言うのだった。
「希望を持っていいのね」
「希望はいつも人と共にありますよ」
 ファティメは今度はこうレツィアに話すのだった。
「ですから御安心を」
「わかったわ。じゃあ」
 その顔をさらに晴れやかにされて応えるレツィアだった。
「あの人に会えるその日を待つわ」
「はい、是非共」
「ヒュオン、待っているわ」
 レツィアはここでまた空を見上げた。先程とは違う表情で。空は晴れ渡り青く何処までも続くかの様だった。その所々にある白い雲はさながら天の使いの翼であった。

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