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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第6話 「ささやかな祝杯」
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皆の者、そう心得よ。
 
 勅命に不服があれば、即刻、自領に戻り、戦の準備に入るが良い。
 陛下の代理人たる帝国宰相が、全軍を持って、それを討伐する」

 あいも変わらず、一旦動くとなると、苛烈になるお方じゃ。
 これで貴族たちも迂闊には、動けまい。
 まあもっとも、劣悪遺伝子排除法は、どこの貴族も表立って言わなんだが、廃法にしてほしいと願っておったからのう。
 どの家も、我が家にそのような者が生まれては、一大事と怯えておったわ。
 皇太子殿下が強権を持って、廃止してくれて、胸を撫で下ろしている者も多かろう。
 それにしても眩しいのう。
 カメラに写されておられる皇太子殿下は、もっと眩しかろうが。
 この度の勅命は、帝国全土、フェザーンのみならず、叛徒どもにも伝えるのだ。奴らの驚く様が目に浮かぶようじゃ。

 ■オーディン郊外 オーベルシュタイン邸■

 本日を持って、劣悪遺伝子排除法は廃法となった。
 長かった。
 生まれつき障害を持つ私は、全ての者達に忌避されてきた。
 だが、今日からは違う。

「ご主人様。おめでとうございます」
「ああ、ありがとう。卿もともに飲まぬか? 祝杯を上げたいのだ」
「承ります」

 私はこの様なことを口にする人間であっただろうか?
 口元が笑みを浮かべているのが分かる。
 そうか、私も笑えるのだな。

 ■宰相府 ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウム■

 そういや、すっかり忘れてたが……。
 ヤンの噂をまったく聞かないなー。今年の九月の半ばぐらいにあるはずの。エル・ファシルの戦いもなかったみたいだし、あれ? エル・ファシルの英雄じゃなくなった?
 うわー。こいつは困った。ここんとこ、遠征も戦闘もやらせなかったしな。スルーしすぎた。
 大人しくしとけって言っておいたのが、間違いだったか?
 フェザーンの自治領主はルビンスキーじゃないし。というか原作前だしなー。それともまさか……ルビンスキヤの方なのか? だったらどうしよう……どうもしないけど。
 まあなんと言っても、ラインハルトちゃん。まだ一〇才。もうすぐ一一才か?
 本気で原作前に終わりそう。
 それにしてもラインハルトは、一々反応するし、突っかかってもくる。からかいがいのある奴だ。けっけっけ。
 アンネローゼに会いたければ、女装必須な。と言ったときの表情と来たら、マルガレータいわく、いじめたくなる様な目だったらしい。
 エリザベートはジークの方がかわいいらしいが、そういやラインハルトいがい、ジークの事をキルヒアイスとは、呼ばないよな。俺も呼んでねーしな。
 ミッターマイヤーもロイエンタールもまだ、大尉だし、あれ?
 ロイエンタールは中尉に格下げされていたよな。
 カストロプ討伐。
 
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