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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第6話 「ささやかな祝杯」
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 第6話 「ここからが始まり」

 皆様、アンネローゼ・フォン・ミューゼルでございます。
 皇太子殿下が正式に、帝国宰相の地位に就かれた事によって、宰相府が開かれる事になりました。
 これはオトフリート三世陛下いらいの事だそうで、オーディン中が大騒ぎになっております。

 帝国宰相はもちろん、ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウム皇太子殿下。
 帝国宰相代理にクラウス・フォン・リヒテンラーデ侯爵。
 この方は元々、帝国宰相の代理の国務尚書をなさっておりましたから、

「やる事は変わりませんな」

 と仰っています。そういう物なのでしょうか?
 閣僚の顔ぶれも変化があるそうです。
 まず、財務尚書のオイゲン・フォン・カストロプ公爵を、更迭するという話もちらりと、耳にしました。

「叩けば、ほこりが出るだろう。というか、とっくに埃を手に入れているんだろう? 一気に片をつけるぞ」

 皇太子殿下とリヒテンラーデ候の話し合いは、とても怖いものでした。
 まさか皇太子殿下に、あのような恐ろしい一面があるとは、思ってもいませんでした。普段のお姿からは想像もできません。
 他にも内務省とか人が変わるらしいです。
 帝国三長官と呼ばれる方々はどうなるのでしょう。あまり軍関係は皇太子殿下も、わたし達にはお話してくださりません。
 以前改革案を話されていた、カール・ブラッケさんとオイゲン・リヒターさんも一応、宰相府に呼ばれているのですが、あくまで一応、だそうです。
 皇太子殿下いわく、あいつらの改革案は、地に足がついてないそうです。政権にお灸をすえるとかいって、実際には国民の方が、お灸をすえられたという話もあるそうなのですが、分かりませんね。
 埋蔵金なんか期待するなよー。と呟いておられたのが、印象的でした。
 まあこれ以上のことは、わたし達にはお話してくれません。
 まだ決まっていないのかもしれませんが……。

 ■ノイエ・サンスーシ 宰相府 アンネローゼ・フォン・ミューゼル■

 お昼過ぎのことです。
 エリザベートさんとマルガレータさんは、食事に出かけられていました。
 部屋の中には、ブラウンシュヴァイク公爵様とリッテンハイム侯爵様とリヒテンラーデ侯爵様が集まっております。

「今日は、例の者を呼んでいる。卿らも同席せよ」
「劣悪遺伝子排除法の件ですな」
「そうだ」

 しばらく致しますと、規則正しいですが、控えめなノックの音が聞こえました。
 立ち上がって扉を開けましたら、顔色の悪い、そして悲壮な表情を浮かべた男性が、立っておりました。

「パウル・フォン・オーベルシュタイン中佐であります」

 抑揚の少ない声です。
 どことなく陰気な雰囲気が漂っていました。

「よく来た。良い
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