第十四話 変な髪形をした奴は嫌いだ
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居る……。
「これはこれは、忠勇無双の帝国軍人、華麗なる天才児がこのような所に居るとは……」
嫌な声だ、他者を馬鹿にしたような声……。声のした方をヴァレリーは見たが俺は見なかった。誰が来たかは分かっている。こんなところで会うのだ、偶然ではあるまい。誰かに俺の後を尾行(つけ)させたのだろう。当然だが絡むために違いない、暇な奴だ。
「おやおや、振り向いてもくれぬのか、ヴァレンシュタイン大将。総参謀長ともなると我ら貴族とは口も利いて貰えぬらしい。それとも卑しい平民ゆえ礼儀を知らぬのかな。……そうか、畏れ多くて言葉が出せぬのか、直答を許すぞ」
笑い声を上げたが声には間違いなく無視された事に対する怒りが有った。馬鹿な奴、礼儀を知らないんじゃない、お前が嫌いなだけだ。特にその髪型がな。
「失礼しました。小官に話しかけているとは思わなかったのですよ、フレーゲル男爵」
「卿の他に誰が居るのだ!」
フレーゲルが声を荒げた。
「独り言だと思ったのです。小官は華麗なる天才児などではありませんから」
前半は嘘だが後半は本音だ。俺なんかに使うとラインハルトに使う言葉が無くなるぞ。
「私を馬鹿にしているのか!」
「そんな事は有りません、本当ですよ、男爵閣下。少佐、戻りましょうか。では閣下、失礼します」
俺が挨拶するとフレーゲルが厭な笑い声を上げた。
「良い御身分だな 、戦場に女連れとは。卿の情人か」
冗談抜きでそう見えるのかな? 俺より背も高いし年も上なんだけど。
「違いますよ、彼女は軍人です。戦場に出ても問題は有りません」
「だが女だろう、帝国軍では戦場に出るのは男だけだ」
「そうですね、しかし素人の男が出るよりはずっと良い、そう思っています」
一瞬何を言われたのか分からなかったようだ。一拍間をおいてからフレーゲルの顔面が紅潮した。それを見ながら歩き出した。ヴァレリーが後に続く。
「貴様……」
フレーゲルが悔しそうに呻いた。
「素人は邪魔しないで下さいよ、迷惑ですから。クライスト提督を困らせるような事はしない事です」
敢えて哀れむような視線でフレーゲルを見た。フレーゲルが身体を震わせた。
「つけあがるなよ、小僧! いずれ貴様とは決着をつけてやる、忘れるな!」
「戦う相手を間違えないで欲しいですね。小官は味方ですよ、フレーゲル男爵。味方殺しは御免です」
「煩い!」
フレーゲルが見えなくなるとヴァレリーが不安そうな表情で話しかけてきた。
「宜しいのですか? あのような事を言って。まるで挑発しているような……」
「構いません。どうせ彼は、いえ貴族達はクライスト、ヴァルテンベルク提督の指揮に口を出しますからね」
「そんな事は……」
有り得ない、いや許されないかな。ヴァレリーはそう言おうとしたようだ。
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