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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?
されど少女は剣を振るう・part7
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―――ここからは何だか人の温かさがあまり感じられない。
苗がはやての家の玄関を見た第一の感想がそれだった。そして、何故そう思うのかを考えた結果、この玄関にははやてのもの以外に靴が置かれてないからではないかという仮説に至った。たかが靴の数だけでこうも与える印象が違うのだな、と思いながら玄関を上がる。
「・・・私の靴が並ぶとちょっと賑やかになるね」
「枯れ木も山の賑わい、やな」
的確な表現であると同時に言ってて悲しくなる言葉でもある。ぽんずの足の裏の砂をウェットティッシュで丁寧に拭き、改めて玄関から廊下へ足を踏み入れた。
ぽんずの散歩がてらに近くを寄ったためせっかくだからおじゃましたはやての家は思いのほかしっかりした一軒家だった。部屋の数も結構あるのに住んでいるのが一人では何とも寂しいものだ。
家のあちこちにはバリアフリー化されているが、これも例の足長おじさんのお金でやったのだろうか。
「普段は人は来ないの?」
「ホームヘルパーさんしかけぇへんな。ココ、不思議と宗教勧誘とか布団の押し売りは来たことあらへんねん」
「来たら来たで困るけどね〜?『オカネフリコメバ、アナタノアシナオリマ〜ス』とか言われたって困るじゃん?」
「それもそうやな」
「なーお」
ぽんずの頭を興味深げに撫でながらカラカラと笑うはやてからは、足が動かない事への悲壮感は感じられない。きっと”そう”であることに慣れてしまったのだろう。
慣れとは恐ろしい。初心者ドライバーは人を殺しかねない運転という行為にすぐ慣れ、孤独に生きる老人はやがて一人でいることに慣れ、戦場を駆ける新兵はやがて人を殺めることに慣れる。彼女だって感じることはいろいろあったろうに、それに慣れてしまえばこんな風に笑って暮らしていける。それが逞しくもあり、同時に苗には理解しがたいものだった。
不便なものは不便だ。寂しいものは寂しい。誰だって足が動くのと動かないのでは、動く方が嬉しいに決まっている。
だが、彼女の足が動かないのは原因が不明だから治療のしようがないそうだ。
・・・原因不明の病を治す方法、か。
(こういう時位、ちょっとだけならズルしたっていいよね?)
まぁ悪戯心があるのは否めないが、苗は不幸であることに人が慣れるというのは何となくその人の視野を狭めているような気がして納得がいかない。だから、ちょっとだけ”ズル”をして彼女を驚かせてあげよう。
はやてに気付かれないよう少し後ろを歩きながら、廊下の壁にぶつからないように歪な剣をぶん、と振る。
その瞬間、この世界のとある確率――はやての足が治る確率――が歪曲した。
その事実を知るのは、実行犯の少女ただ一人である。
= =
ここで、皆さんに苗自身も気づいて
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