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『ピース』
『ピース』
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味に傘をさす一言。大人やな。これだけセックスの話が盛り上がるということは、すなわち未経験者が多いということなのだけど、それにしてもその話題が飽きもせず数日も続くのは何故だろう。僕は少し麻痺してきているのだけれど。
「相性ってなんスか?」僕は勝島君に訊いた。
「キコウだよ」
「え?」と僕は問い直した。
「中国の気功。接して漏らさずの。あれって男が感じすぎると負けるのな。感じすぎるってのは五感がビンビンになってるってことなんだよ。でもそこには秘密があってさ…。なんていうかな、アレやってるときさ、目に見えない鈍い塊みたいなもんがよってくるんだよ。それに取り憑かれると鈍くなってさ、こっちが鈍くなっているときは相手がビンビンなんだよ。こう、つまり、シーソーみたいなもんなんだよ」
 教室の中は澄んだ色の混沌だった。コーヒーフィルターを通り抜けた褐色の飲み物みたいに、色々な味の声色が混じり合い、意識を刺激し続けている。腹の中にエナジーが沸々と沸いている。大きな人が教室に入ってきて、「素晴らしいヤル気がみなぎっているじゃないですか!」と、賞賛の言葉を漏らすほどそれは清潔だった。その向こう側で誰かが湿った空気を吸い込んでじっと耐え忍んでいることは誰の目にも明らかだったけど。
僕はこの混沌の中で、自分が幸せになれる立ち位置が見えない。幸せというもの自体何であるか分らないし。それを見つけるのは天空の城を見つけるように難しい事の様に思えた。顔で、運動能力で、賢さで、肌の色で、そしてペニスで、そんなもので立ち位置が変わり続けるこの塊の中でどうやり通すのか。混沌。

「夢というものはですね、コロコロとあらゆるところに落ちているものなのです。それをつかむにはね、手を伸ばさなきゃいけない。目一杯手を伸ばすんです。たとえその手に取ったものが、泥で汚れていても、クシャクシャに丸められた駄作であろうとも、浮浪者が捨てていったゴミのような物でも、想像力を鍛えることでピカピカに磨き上げる事が出来るんです。それには、この教科書を読み解くことなんか朝飯前に出来てしまう強さが必要なんです。手を伸ばして、ピカピカに」
 そう言って教師は授業を始めた。僕の胸はもう悪くなり始めている。この高校の教師は、概して僕の胸を悪くする。それは声や、話の出来不出来ではなくて、なんと言ったらいいだろうか、中学で言う番長が教室に入ってきた感じ。緊張と、見せかけの怠惰が入り混じっただるい笑いの、フニャちんの僕なのである。「いえ、僕は女ヤりませんから」という雰囲気を体にまとわす。いつから僕はそんなものを演じるようになったのだろう? もしかすると僕は正攻法で負ける事に怖気ついているのかもしれない。ホントは幸せの中でオッパイ揉みたいのに。
実は、本当に僕の中学に、そんな番長がいて、そいつは、いい女をどれだけ囲えるか
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