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『ピース』
『ピース』
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ロなのは僕のほうじゃないだろうか? 僕は自分に腹を立てる。

 帰りの道、地下鉄駅に近い中華料理屋で僕はチャーハンを食べていた。店主は何に怒っているのか普通のチャーハンが大盛りの様に盛り上がっている。たくさん考えた後は、何も考えずに飯をかき込む。後ろの席でジャージを着た中年の男二人がしゃべっていた。ビールを飲んでいる。店に入った時、すでに二人がいたから、視線を合わせないように、窓のほうを向いて座った。誰もいない中華料理屋も興ざめだけれど、これはこれで落ち着かないものがあった。『女』という言葉が僕の心をキュウゥとひきつけた。
「あの人、男と別れたらしいでしょ」
「何でわかる」
「匂いが違うから」
「香水か?」
「いや」
「体臭か?」
「いや、男がいるときの女、背筋がしゃんとする空気持ってるでしょ」
「お前、その辺のことに鼻利くな。男の固いものが入ってないとやわな女になるのか。面白いじゃないか。で、その後どうなる?」
「あの女、兄貴ねらってるでしょ。別の女あてがうでしょ」
「諦めたところねらうのか」
「諦めませんよ、あの女。めちゃくちゃに我、強いですから」
「それでどうなる」
「兄貴に近いところいるでしょ。相談に乗るでしょ。兄貴の弱い所突きますでしょ。尻拭いてるのはいつも自分らでしょ。借り作るでしょ。自分ら一コ上行きますでしょ」
「あの女、諦めろ言うのか」
「将来とあの女どちらが重いの」
「話にならんわ」
 僕、その女見てみたい。そして僕を見てなんと言うかな。汚物のように見下すだろうか。僕はちょっと『M』家に帰ったら、じっくり自分の体を鏡で吟味しよう。
 店を出た僕は地下鉄に乗り「すすきの」で降りる。近くの喫茶店で豆を挽いてもらわなければならない。待ち合わせに使われる改札前で、笑いながら手を振る薄い髪の色をした女子高生を見る。胸が詰まるような思い。卒業した後は、夜の世界か芸能界かも。この手の胸を刺激する女の子を相手に出来る男はきっと不感症に違いない。おかしくなるよな、頭。
 そこにある喫茶店はおじさん、おばさんが多い。僕みたいな高校生が入る店じゃない。僕の後ろには中年の一歩手前の男がタバコをふかしていた。ウェイトレスの女の子に「スペシャルブレンド200g、中挽きで」とお願いする。「あと、ブレンド」
 店には新聞が置いてあったが、暇つぶしにわざわざ読字障害と戦う気にはなれないからぼんやり夢想していた。蜂の巣について。
 綺麗に整えられた学問に、噛み合ったチームプレー、相思相愛の恋人たち、気分の悪い時に逃げ込む行きつけの店、独占禁止法。それらの作り出すものが蜂の巣みたいに正確な六角形をして、世の中をうまく崩れないように支えあっているのではないか。学問、スポーツ、独占禁止法? 何故。焦点を絞ろう。天才の才能は蜂の巣を造るよ
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