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『ピース』
『ピース』
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値札を見る。こんな高級な時計してたら腕切り落とされるぜ。物欲と自意識が合い混じって複雑な汗をかく。手のひらを制服にそっと置いて汗を拭く。手の匂いを嗅いでみると少し生臭かった。
美麗なデザインの時計は好きになれる。ロレックスは嫌い。前に聞いたことがある。いろんな時計を試した後、時計好きはロレックスに行き着くのだそうだ。僕はロレックスが嫌いなことと、童貞であることをイメージで混ぜる。
 パソコン売り場で寒天のような感触のキーボードを叩く。ワープロソフトが立ち上がっていたので適当に文字を入力する。「てろてろりん」と残していった。可愛い感じでね。そこには何列にもなってパソコンが並ぶ。こんなに競争しなきゃいけないのかな。同じような外見はマニアックな知識を要求する缶コーヒーの類。
「お客さんここが違うんですよ!」と。
 僕は叩き応えのある、イカ刺しのようなキーボードを使っている。筆圧の強い感じでキーボードを叩いている。ちょっとのこだわり。
 店を出る時、残していった「てろてろりん」が気になった。平仮名の読める欧米人は「テロテロりん?」と眉をひそめるかもしれない。
「テロ」
東北の地震は人工地震でテロの可能性があると、ネットで読んだ。本当かどうかは頭のいい奴が考えるだろう。僕はぼんやり経済のために人を殺すことを考えている。もちろんそんな実感は想像力をめぐらせても触れることは出来ない。知識とお勉強が命を記号に変えるという事。彼らは仏の論理を説くように学問で人をひれ伏させ、自らを手の届かないところに置く。誰の手も触れることの出来ない場所は正しいか否かは別にして、安息の地だ。彼らは怖いのである。何が怖いって? そら、血の通った世の中の真実だろう。そんなことを思う。彼らの紡ぎだす真実らしい姿をしたこの世の事々は、誰かがうまく善の血を通わせて弱い人間に忠誠を求める。僕らはどうあがこうと良きことに従わざるをえない。何か間違いがあった時、重荷はグルグル回りながら弱い人間に集まってゆく。彼らは「私たち知識人がいなければ、あなた達は幸せな暮らしなど出来ないのですよ」そう言って高いところから見下ろしている。命を記号に変える。それは自らの心を乱されないため。間違いはあると思いながらふてぶてしく生きるため。頭のいい奴が優しく手を差し伸べる。頭のいい奴が人から何かを奪ってゆく。どちらも同じ意味になる。そこに同情などはあるべくもない。同情は下層に住む人間だけのものかもしれない。優秀な人間の血の通ったところがみて見たいな。頭のいい奴に意地悪をされたわけでもないのに、この卑屈。進学校の落ちこぼれ。プライドと劣等感の狭間で揺れる。爆発的に考えた僕の頭は風に吹かれて冷えてゆく。頭のいい奴は必要ないか? 必要だよな。そこなんだよな。僕の頭の中に浮かぶのは、コンビニエンスストアのフランチャイズ契約
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