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『ピース』
『ピース』
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言った。
「シニアリーグ?」と僕は訊いた。
「うん、友達は結構、有力校に行ったね」何か高級なものを吟味するような目で勝島君は言う「喜び方が違うんだよ」斜め前、宙に指を伸ばしている。「怒り方も違う」
 僕は黙って「喜び方?」 と首をかしげた。
「運を当たり前のように使えるんだよね」
「運を使う?」と僕返した。
「あきらかに一線を越えるときがあるんだよね。いつもは九割。常に九割。ベストパフォーマンスの九割出せって、コーチが言ってた。強い奴はここぞって時に十二割になるって。そういう奴はホント強い所行ったよ」
「運が強いと十二割?」と僕は訊いた。
「マジ、そうっスよ」勝島君はニコニコしながら答えている。「芯の強い奴マジ運強いよ」
僕は思った。十二割の時喜ぶのか。
「絶対的な強さ? 相対的な強さ? ホント奴ら絶対的強さ持ってるから」勝島君はうれしそうに語る。自分の歩いてきた道に花が咲いている、みたいに。「はたから見てて諦めを知るような強さ。それを知る前は全力のオナニー」そうつぶやいて空に視線を投げている。
「あのさ、知ってる?」と勝島君は話題を変えた。「最悪の先輩」
「最悪の先輩?」
「今から十八年前の卒業生がいなくなってから、この高校変わったって話」
 僕が首を振ると、勝島君は続けた。
「それがマジ笑えんだよ。伝説だよ」
「お前ごときが好きになる男あふれたら、日本終了だろが」と言って勝島君は笑っている。「口癖、口癖」
僕は少し戸下さんを思い出した。
「リーゼントで青い顔してタバコをふかすしぐさでため息する。生臭い息で。壁のポッチ見つけたら指でコリコリ撫でまわす」
 僕の前立腺は刺激されて、ちょっと勃起する。それは犬のチンチンみたく硬く小さくなっている。心はバネが開放されたように上に伸びていって脳天から笑い声が出る。
「窓からの光を気にして顔の角度を変えたりして。顔ブツブツしてるのに」
 僕は口に手を当てて息を確かめた。臭わない。
「俺が物心ついた時、村上春樹が小説を書き始めた」
馬鹿に出来る人がいるという事はなんて幸せなんだろう。内臓が泡立つように喜んでいる。
恐らくすべての人がその時代にゴミを捨てていた穴ぼこの話。
「最後の日その人、卒アルしゃぶったらしいぜ」
 頭の中に今日の地下鉄が思い出される。ブレーキにあわせて腰をOLにあてがうやんちゃな高校生。
「それがさ、超能力だったんだよ。そいつがこの高校入れたの。そいつ人の幸運吸い取るらしいぜ。そいつの周り、いつも空気が薄くて、そいつにかかわる奴みんな落ちていくんだよ。人から幸運吸い取って、馬鹿なのに高校入れた。そいつが卒業してからこの高校やたら良くなったんだよ。空気が濃くなったちゅうのかな」
 空気が薄い? 僕がいつも感じていることじゃないか。
「そいつ、隣
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