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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第72話 廃墟の聖堂
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で見つめるこの少年の方に大きな落ち度は無かったとは思いますが。
 ただ、そんな相手に本気で斬り掛かって来る事が出来る性根のヤツだと言う事は理解出来ました。
 この目の前の銀髪オッドアイの美少年がね。

 いい加減、この馬鹿を排除して、さっさとこの事件の黒幕を引っ張り出した方が早いかな、と考え始めた俺。
 その瞬間、

 寸前までジュールが手にしていた柳葉刀が消滅。
 その代わりに現れる二メートルあまりの和弓と、刀身の捻じれた禍々しいまでの気を放つ剣。

 そして、その剣先を俺に照準。
 強き瞳に俺を映し、呪文を唱え続ける薄いくちびる。
 その弦を引き絞る姿は、ある種の神々しさを感じさせる。

「成るほど、接近戦は得意なようだな。それなら、これはどうだ!」

 その言葉と同時に放たれる螺旋の剣。
 それは高速の飛翔物体となって――――

 素直に俺に躱された螺旋の剣は、乾いた、空しい音を立てて俺の後方……開かれたままの聖堂の扉を抜け、石畳の道に着地。そのまま、放たれた時のベクトルを維持して少し身を滑らせ、カランと言う音と共に停まって仕舞った。

 ………………。
 空しく過ぎて行く時間。
 呆然とした表情で、その剣の滑って行く様を見つめるジュール。

 そして……。

「おまえ、なぁ。禁呪と言う仙術を知って居るか?」

 手の中に次々と武器を出現させるなど、色々と芸だけは達者な雰囲気のジュールくんに対して、そう問い掛ける俺。
 しかし、完全に失調状態のヤツから言葉を返される事はない。

「普通に考えて、あれだけ、これから何かやりますよ、と言う雰囲気を発して居て、それを黙って見ているほどのノータリンばかりやないで。世の中の人間と言うのは」

 まして、この目の前のオッドアイの少年ジュールくんは精霊を支配出来ない一般人。魔法への抵抗力はゼロと言っても言い過ぎではないレベル。
 あれだけ前振りが長い技に介入して、技の効果を発揮させない禁呪の術式を組み上げる事など児戯に等しい。

 はっきり言うと、駆け出しの道士が操る禁呪の初歩の初歩。術を禁ずれば、すなわち現る事あたわず……だけで禁止して仕舞える程度の抵抗力しか持って居ませんでしたから。

「俺の技が通用しない?」

 完全に失調状態のジュール。呆然と何処かを見つめる瞳が――――
 しかし!

「天の鎖よ!」

 一瞬の閃き。その言葉の発せられた瞬間、それまで何も無かった空間に穿たれる穴。
 その、何処とも知れない空間より顕われた鎖が俺を絡め取ろうとした正にその刹那!

 俺とその鎖の間に現れる防御用の魔術回路。蒼く光り輝くその明かりに因り、世界が完全に包み込まれ、
 その光が消えた瞬間、自ら召喚した鎖に雁字搦めにされ
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