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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第72話 廃墟の聖堂
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そう問い掛ける。
 そう。俺がこの少年から感じて居るのは、確かにこのハルケギニア世界では貴族と呼ばれる魔法使いの中ではかなりのレベルの魔力を感じさせるモノでは有ります。

 しかし、彼に付き従う精霊は存在せず、両手に構えた黒白、二振りの柳葉刀からも、それなりの霊力を感じる事は出来ますが、どう贔屓目に見ても、俺の纏う精霊の護りを切り裂く事が出来る霊刀と言う程の業物でも有りません。
 こんな物を目の前で構えられたトコロで……。

「怪我せん内に、さっさとここから逃げ出した方がええで。俺の目で見る限りでは、少なくとも、オマエよりも、オマエの周りに居るその修道女たちの方が余程危険な気を放っているからな」

 コイツがここに有った聖堂を襲って、この少女たちを生きて居る死体状態に出来たとは思えない以上、コイツ以外に誰か黒幕が居る事は確実。
 それに、俺は弱い者イジメをして喜ぶようなゲスでは有りませんから。

「その余裕の態度が何時まで持って居られるかな!」

 徒手空拳。いや、それどころか、雰囲気を戦闘時のそれに持って行こうとしない俺に焦れたのか、魔力で実体化させた双刀を構え接近して来るジュール。
 その姿は、普通の人間の目で見たとするのなら、正に疾風。
 しかし、精霊の加護を得、アガレスを起動状態にして有る俺の目から見ると、鈍重なカメの歩みにも劣る動き。

 俺やタバサが存在している世界は大気さえ物理的な圧力を発生させる超高速の世界。
 対して、このジュール・セザールと言う名前の少年が存在して居るのは、人間の達人レベルの世界。

 正直、相手をするのもアホ臭いレベル。

 右手に構えた柳葉刀の左斜め上からの斬撃を軽く左脚を下げるだけで躱し、
 それに続く左腕が突き出して来る一閃は、上体を左に倒すだけで躱す。

 そして、突っ込んで来たヤツの身体に対して――

 一瞬の交錯の後、再びノロノロとした動きで離れるジュール。
 その見事な銀髪と、白磁と言うべき肌のおデコに、赤い痣を残して。

「キサマ!」

 再び、最初と同じ五メートルの向こう側から、今度は最初とは違う殺意の籠った瞳で俺の事を睨み付ける赤い僧服の少年ジュール。

「今のデコピンが本気の一撃なら、オマエの頭は吹っ飛んでいるトコロやで」

 もうアホ臭くて、説明をしてやるのも疲れるのですが……。それでも、まぁ、何が起きたのか、ジュールくんには理解出来ていないでしょうから。

「そもそも、正面から相対した段階で、相手の実力も理解出来ない程度の人間では話にもなる訳がないでしょうが」

 もっとも、この部分に関しては、俺の方が武器を構える事さえ行っていないので、その構えた姿から、俺の実力の一端を計る事が出来なかった以上、俺を殺意の籠った視線
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