第5章 契約
第72話 廃墟の聖堂
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みを見せる。
そして、
「赤い僧服の意味は知らないのか、田舎者」
かなり尊大な口調で逆に問い返して来た。
しかし、赤い僧服の意味か……。
「赤い僧服とは、殉教者の色。神に捧げられた尊い聖人のための祝日に着用する」
確か、ガリアでは十一月の第一週、虚無の曜日は先祖を敬い、花を捧げる祝日と決まって居たはずですか。
普通の場合ならば。
俺の答えを聞いて、ニヤリ、と言う表現が似合う笑みを浮かべる少年。
どうもこの銀髪オッドアイの少年は、顔の造作や全体から受ける印象と、口調や視線、更に雰囲気などが一致しない部分が大きいように感じるのですが……。
何と言うか、妙に下卑た印象が有ると言うか……。
そして、俺が訝しげな瞳で彼の事を見つめて居る事が妙に嬉しかったのか、かなり上機嫌な雰囲気で言葉を続ける。
それまでの彼に相応しい口調で。
「此処に居た三十人以上の修道女たち。神に捧げられた殉教者たちの為の僧服。それが、この赤いカソックの意味だ」
ほぼ、最悪の言葉を続けた赤い僧服の少年。
そして、その台詞は大体想像通りの内容。
何故ならば、俺の見鬼が、この目の前の少年に関しては生者のそれを発して居るのは感じて居たのですが、彼の周囲に傅いている少女たちに関しては、非常に強い陰の気を漂わせて居ましたから。
間違いなく生者では纏う事が出来ない、死と言う雰囲気を……。
「判ったら、さっさとその女どもを残してここから消えな」
そう言った瞬間、その赤い僧服の少年から何らかの魔力が発動する。
そして、次の瞬間。赤い僧服の少年の両手に、黒白二振りの柳葉刀が握られていた。
そうして、
「このジュール・セザールに殺されるか。好きな方を選べ、クソ餓鬼」
……と、彼の容姿や、服装に相応しくない口調でそう問い掛けて来たのでした。
ジュール・セザール。成るほど、本名だとするとかなりの大物の名前を受け継いだ人物のようですな。
しかし……。
………………。
…………。
ゆっくりと過ぎて行く時間。但し、この元ブリミル教の聖堂の廃墟全体が戦場の空気に包まれ、緊張している訳では有りません。
いや、俺の目の前に存在している、腰を僅かに落とし、体重をつま先に掛け、両手に柳葉刀を構える姿のジュール・セザールと名乗った赤い少年からは戦意に満ちた気を感じる事は出来たのですが……。
「オマエ、一般人やろうが」
前のシアエガ召喚の時に感じた妙な脱力感にも似た……。なんと言うか、やるせない、と言うか、もう、このまま宿に帰って眠りたいような、何処に持って行って良いのか判らない複雑な気分に囚われた俺が、
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