第5章 契約
第72話 廃墟の聖堂
[6/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
が、単調な音階をただ繰り返すだけで有った魔笛の音色に重なり……。
そして、次の瞬間。ふたつの笛が創り上げた世界に相応しい儚い歌声が重なった。
淡々と……。
そう。これはブレストの街でギアスにより操られ、暴徒と化した人々を解放した際に使用した術式のアレンジ。
あの時と同じように俺を中心に置いて、タバサとは笛を通じて。湖の乙女とは曲を通じてお互いの霊気の増幅を行いながら、夢うつつの状態で歩み来る少女たちを操る魔笛の音色を凌駕して行こうとした術式。
しかし!
しかし、あの時と比べると今夜は状況が悪過ぎる。あの時は、土地神はこちらの味方。更に、近場に存在する龍穴もすべてコチラが支配下に置いた状態。
対して今回の場合は、この場での土地神の召喚は行ってはいない。更に、龍穴に関しても、その場所の確認すら行えていない。
まして、このイフ島自体が、俺や精霊魔法とは相性の悪い土地で有る可能性が高いので……。
単調な音階を刻むフルートの調べと、長嘯術が産み出す拮抗。
その拮抗により、髪より水を滴らせ、肌に張り付いた夜着により失いつつ有る体温をものともせずこちら……聖堂内へと進み続けて居た歩みが、この瞬間、停まった。
その刹那。
「我は乞う。月とヤドリギを持って大地に城を描く」
蒼穹より降り注ぐ蒼き光に導かれ、黒髪の少女の手より放たれる五本の矢。その矢が、廃墟と化した元ブリミル教の聖堂内に大輪の桔梗の花を咲かせる。
そうだ。例えこの周囲の龍脈が相手の支配下に有ろうとも、コチラもガリアの龍脈をほぼ完全に支配下に置くティターニアが存在し、水の気を支配する湖の乙女が存在している。
そして、この地は海に囲まれた小島の湖の修道院。名前も、そして地形からも水の気に溢れた場所で有り、精神支配された少女たちを操っているのも水の気。
それならば、土克水。あふれ出す水の呪力を、土を用いて堰き止める。これが想像以上に効果を発揮する。
更に、水生木。タバサと湖の乙女が集めた水気を木行の俺が少女たちの精神を揺さぶる長嘯の仙術として使用。
これにより、半端な術など無効化する事は可能。
まして、晴明桔梗印は、この世界に俺が召喚されてから度々遭遇して来た連中の能力を著しく減退させる効果を発揮する結界術でも有りますから。
その瞬間!
それまで、覚束ない足取りながらも、自らの足で大地を踏みしめ立って居た少女たちが、まるで糸の切れた操り人形の如き雰囲気で石畳の道に次々と倒れ込んで仕舞った。
間違いない。矢張り彼女たちを操って居たのは水妖の類。
そして、可能性として高まったのは、晴明桔梗印結界がかなりの効果を上げる神性を有して居ると言う事。
そして、最
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ