第5章 契約
第72話 廃墟の聖堂
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親の身分が低い子供。そして、魔法至上主義世界と言う特殊なハルケギニアの貴族社会の中で魔法の才能に恵まれなかった者たち。
いや、それ以外にもっと可能性の高い存在。忌むべき双子として生まれた片割れなどが幽閉される修道院の可能性が有る、と言う事ですから。
俺の【問い】に対して、その視線だけで肯定の答えと為す湖の乙女。
その答えを聞いた後、不自然に成らないようにゆっくりと視線を、波に洗われつつある小島に向ける俺。
その小島。四方を切り立った断崖に囲まれ、その断崖の上に、更に城壁が積み上げられる堅牢な造り。
そして、地球世界のこの時代のイフ島は、政治犯やユグノーたちなどを収容する監獄島で有った事実と照らし合わせて考えると……。
この島が高貴なる者たちの牢獄で有る可能性が高いと言う事ですか。
ただ、ここにタバサの妹。一度、夢の世界で出会い、十月に再会を果たした少女が、このイフ島の湖の修道院に確実に幽閉されて居た、とは限りませんが。
但し、この眼下に見えて居る修道院が三年前に海賊に襲われた際に、ここで神に仕えていた修道女たちはすべて殺されるか、何処かに連れ去られたと言う話。
そして、このような貴人を閉じ込めて置く女子修道院が他に有る可能性と――
俺は、其処まで考えてから、再び月夜の似合う蒼い少女の麗姿に視線を戻す。
そう。タバサがこの島と女子修道院の事を知らなかった事実を重ね合わせると……。
「取り敢えず、準備をしてからあの島に乗り込む。そうすれば、毎年起きる少女の行方不明事件と、あの廃墟と成った女子修道院との間に関係が有るか確認出来る可能性も有る。
それで構わないな、ティターニア?」
俺の決断に、淡い微笑みを持って答えるティターニア。
但し、その春の女神に相応しい彼女の優しげな雰囲気でも、今回の事件に纏い付く闇を払拭する事は出来ませんでした。
その瞬間も俺の生来の能力で護られた空間の外側では、雨を伴わない吹き荒ぶ北風と、その風が産み出す、すべてを削り取るが如き波が支配する嵐の夜が続いていた。
☆★☆★☆
かつては荘厳な、と表現すべき祈りの場所だったはずの其処は、ステンドグラスは完全に抜け落ち、正面に存在したはずの神の似姿を描いたフレスコ画は半ば以上が床にばらまかれている。
外界との境界線を意味する扉、内部に並ぶべき椅子はすべて炭化。いや、そもそも、焼け落ちた天井の残骸が其処かしこに転がる。
廃墟と化してから間がない事は感じられる元ブリミル教の聖堂。
もう誰も祈る事のない礼拝堂。
二度と流れる事のないパイプオルガンと聖歌の響き。
ここが三年前の惨劇の現場で有る事を差し引いたとしても、かなり危険な雰囲気を湛えている場所で有る
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