第5章 契約
第72話 廃墟の聖堂
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言う切り立った断崖の上に石造りの城壁にも似た構造物を乗せた……まるで海上に浮かぶ要塞のような雰囲気の小島。
そう。まるで、海に浮かぶカメの甲羅。まったく起伏を感じさせない自然に存在して居る島と言うよりは、人工島。判り易く言うなら、空港を作る為に埋め立てられた人工島と言う雰囲気。
確かに、島の中央よりは北部側の海に面した断崖の上に建つ比較的大きな建物。一辺が三十メートル以上の正方形の建物だったであろう建築物が見えて居るだけですが……。
ただ……。
ただ、夜で有るにも関わらず、その建物からは灯火や、魔法の光が外部に漏れ出す事はなく、轟々と吹き荒ぶ北風の中に黒々とした廃墟に等しい雰囲気を周囲に放つのみ。
まるで、有史以前からこの島のこの場所に立ち続けて居るのではないかと言う、そんな有り得ない想像までして来るような。
そんな心の何処かをひっかくような。何処か奥深くをかき乱されるような、そんな不気味な雰囲気を漂わせている建物では有りました。
しかし……。
しかし、俺の問い掛けにゆっくりと首を横に二度振るティターニア。その彼女の動きに合わせて、彼女の腰まで届く長い黒髪がふわりと広がり、彼女に相応しい花の香りを俺の周囲にまで届けて来た。
嵐の夜に相応しくない春の花の香りを……。
そして、
「ブリミル教の聖堂となった時点で、その土地は私たち精霊に取っては影響を与えられない土地と成ります」
この四月にタバサに召喚されてから、ずっと感じて居た事。むしろ違和感と言っても良いレベルの事象。俺の探知魔法の邪魔をされるだけならば未だしも、ダンダリオンの鏡ですら邪魔をするブリミル教の聖堂。
矢張り、この世界の中心と成って居る宗教と、俺やタバサの行使する精霊の魔法との相性はすこぶる悪いと言う事なのでしょう。
「あの湖の修道院に関しては、その信仰の拠点としての機能を失ってから既に三年。しかし、未だに私たち精霊の探知さえ受け付けない場所と成っています」
そう言葉を続けたティターニア。
確かに、それは異常。いくらかつて聖堂として機能していた場所だったとしても、それは、其処に暮らす者たちの日々の信仰心によって聖域としての機能が維持されて居たはず。
そして、このイフ島がブリミル教への信仰を失ってから三年。しかし、未だブリミル教の聖堂としての機能を維持していると言う事は……。
「簡単に考えると、この地は未だブリミル教への信仰を失っていない」
もしくは、三年前の段階でブリミル教以外への信仰を持つ何モノかの棲み家と成ったのか。
其処まで考えが及んだ瞬間、少しの恐怖心と、そしてそれ以上の何かを強く感じる。
そう。この世界に召喚されてから、向こうの世界ではあまり体験出来ない類の事件
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