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オベローン
第二幕その六
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第二幕その六

「うわっ!」
「舟が!」
 四人は海の中に放り出された。シェラスミンは咄嗟にファティメの手を取った。
「私に捕まって!」
「はい!」
「シェラスミン!」
 ここでヒュオンが彼を呼ぶ声がした。もう声は遠くになっている。波に流され声が話すその間にも遠くになろうとしている状況だった。
「レツィアは私と一緒だ!」
「そうですか!」
「私は必ずフランクに戻る!」
 真っ暗のその豪雨と暴風の音に何とか掻き消されないように必死に叫んでいた。
「その時に会おう!」
「わかりました!」
「ヒュオン様!」
 ヒュオンはレツィアをその両手に抱き締めていた。その彼女の言葉だ。
「私は貴方と」
「何があっても離さない!」
 彼はレツィアにここでも誓った。
「貴方は僕が守る!」
「私も貴方と」
 レツィアもそれに応えて言うのだった。彼にしがみつきながら。
「何があっても一緒です」
「ファティメさん、離しませんよ!」
「私も離れません!」
 四人はそれぞれ二組に分かれ嵐の中に消えた。ヒュオンとレツィアが気付いたのは砂浜だった。そこに二人抱き合ったまま打ち上げられていた。
「僕達は」
「生きているのでしょうか」
 二人は身体を起こした。そのうえで周りを確かめる。そこは白い砂浜だった。青い空と海は彼等を飲み込んだ嵐が嘘の様に静かで清らかだった。
「そしてここは」
「何処かの砂浜でしょうけれど」
 だが何処かまではわからない。しかし二人は共にいるのに気付いたのだった。
「僕達は生きている」
「間違いありません」
「生きているのなら」
 ここでヒュオンは立ち上がって言うのだった。
「僕達はフランクに帰ろう」
「はい」 
 レツィアはヒュオンのその言葉に応えて頷いた。彼女は上体を起こしたままでまだ砂浜の上に座り込んでいる。その足元に白い波が打ちつけている。
「何としても」
「海が、この巨大な怪物が」
 レツィアは言うのだった。
「例え私達を飲み込もうとも私達は一緒です」
「そうだ、離れることはない」
 ヒュオンもまた言う。
「僕達は何があろうとも」
「神に、そして愛に誓います」
 レツィアもここで立ち上がった。そうして言うのだった。
「何があろうも私達は一緒です」
「幸い僕にはまだこれがある」
 ここでヒュオンは腰の剣を出すのだった。
「この剣がある限り僕は君を守る」
「はい、私も貴方から離れません」
「永遠に」
 こう誓い合い砂浜で抱き合ったその時間だった。何とそこに海賊達が来たのだった。
「んっ!?御前達は」
「おい、上玉がいるぞ」
 見るからに柄の悪い連中だった。日に焼けた身体をしておりその手にはそれぞれシミターを持っている。髭を生やしターバンを巻いていると
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