崑崙の章
第18話 「むにゃむにゃ……もう食べられないのだ……」
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この農法については、私もご主人様から教わった。
同じ作物を育てるのではなく、一年ごとに違う作物を四つの畑でそれぞれ栽培する。
その作物は、それぞれ決まっていて、中にはただの家畜の餌にしかならないのもある。
だから、穀物自体の収穫量は、四年で合計すると減っちゃうけど、食料自体の生産量は大幅に増す上に、土の力も回復できる、ということだった。
「あと、今までやっていた陸稲は廃止します。これは、その場所を畑として輪栽式農業をするためです。そのため、米の収穫量自体は減りますが……総食糧生産量としてみると、倍以上になることが試算されています」
「なるほど……」
「話は米に戻りますが、稲藁が肥料になることは示したとおりです。次に、籾殻です。こちらは、焼くことで薫炭と呼ばれるものになります。これも土の力を回復させる肥料になります」
「おお!」
「特に畑で育てる大根、カブなどの肥料には最適だそうです。そして玄米から取れる糠。こちらも肥料になるだけでなく、野菜を漬けておくことで、長期保存ができる『漬物』というものができます」
「す、素晴らしい!」
朱里ちゃんの説明に、文官も武官も興奮した様子で互いに歓声をあげる。
そっかぁ……私は幽州の農民だったから、米というのがそんなにいろんなことに使えるなんて知りもしなかった。
凄い作物だったんだ……
「さらに、米は料理法でいくらでも味が変わりますし、練餅などにすれば数日ですが、保存もできます」
「練餅……あれは小麦では?」
「米でも同じようにできます。餅米という種類だけでなく、通常の米でも炊いた後にお湯につけた後、更に蒸せば餅のようになるそうです。これをたがね餅というそうです」
「ほほお……」
「また食べるだけでなく、米の粘性を利用すれば糊という、物を貼り付ける効果もあるそうです。これも量産できれば、主要な特産品となるでしょう」
「「「………………」」」
文官、武官の皆さんが唖然として互いを見やる。
どの顔も、自分の目の前にある米という作物の力に、驚いているみたい。
その様子に、朱里ちゃんは皆を見回して、こほんと咳払いをした。
「皆さん……私達は今、漢中周辺の大規模な農業改革を行おうとしています。先ほど言った輪栽式農業の導入、そして陸稲の廃止です」
朱里ちゃんの言葉に、皆の顔から興奮が冷めていき、真剣な顔つきになる。
「農民は、突然の改革に戸惑い、不満を上げてくるかもしれません。ですが、この方法がきちんと普及すれば、今より何倍もの人を養うことがきるようになります。それはすなわち、民の命を救うことになります」
「………………」
「食料が増え、民が豊かになれば賊に身を落とす民も減ります。飢えることが無くなれば、食べ物がなくて
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