Chapter-6 第22話
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います。ローラ姫を救い、そして結ばれたあなた。あなたも、死んで欲しくないわ……」
若い女は目を潤ませ、祈るように手を顔の前に組んだ。ハルカは顔を少し赤らめながら、微笑んだ。ローラ姫と結ばれたと言われたからである。
「大丈夫。僕は絶対に死にませんよ。死んだらロトの伝説も終わる……あの方の伝説は、これからも続いていかなければならないのですから」
遠くを見た。まだ見ぬ大地。ハルカは決めていた。
「僕は……行くんだ」
ボソッと言葉が出る。人々がハルカの方を見る。
「なんです?」
「あ、いえ。何でもないんです」
ただハルカは笑っていた。誤魔化しも無く。ただ、まだぼんやり考えていただけだから、という理由を自分の中でつけて。
(レイシア、サマーヴィル、ムーンタウン……)
本の中でしか見たことの無い、外の世界の地名。本当かどうかは誰も知らない。空想の話かもしれない。
ハルカは、決めていた。ただ、今はまだ誰にも、ローラ姫にさえ話してはいない。
「……では、僕はこれで」
一呼吸した後、ハルカは立ち上がる。マントについた草をそっと払いながら。
「そうかそうか。……気をつけてな」
「絶対に勝ってね」
「勇者ハルカ様!ご武運を!」
ハルカの背中に励ましの声が届く。ハルカは振り向いて、手を振った。
集落の人たちも、笑って手を振った。
まだ、明るい時である。太陽は微かに覗いている。
南の方にあるこの場所はまだ寒さが控えめである。
今まで足を踏み入れたことのない、聖なる祠。
雨の祠より豪華な造りとなっている。
扉にはこう書かれていた。
“用のない愚か者は帰ること! 賢者ディヴァン”
(……この人、は……以前ここに来なくて本当に良かったのかもしれない)
ハルカは書かれた木の板のメッセージに呆れながら、扉を叩く。
そして扉の向こう側の者に聞こえるように、大きな声で言う。
「すみません!あなたに用があってきました」
しばらくすると、扉が少しだけ開いた。
「……なんじゃ、ああ、そうか、入れ」
老人――賢者ディヴァンは一瞬眠そうな顔をしたが、ハルカの顔を見ると、目をきちんと開き、軽く頷くように首を動かした。
賢者ディヴァンは扉をもう少しだけ大きく開くと、扉から離れた。
(僕に入れって事か…?)
苦笑しながら賢者ディヴァンの招き通り、中へと入る。
そして、ハルカは自分で扉を閉めた。
(全く……)
しかし、重要な場面で愚痴を言うわけにもいかなかった。
それに、賢者ディヴァンに扉を閉めてもらうことに期待することが愚かな事かもしれない。
ハルカは、祠の内部を振り返りで見た。
そこは青い部屋。水路もあり、中央には石版と真紅の箱が台座の上に置かれていた。
美しい、もしくは神々しい光景に見えた。
「さあ、勇者ハルカよ、中央
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