第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
三十七 〜獅子奮迅の嵐〜
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ているまでだ」
「い、いけません。仮にも、あなたは私達の指揮官ではありませんか!」
「元指揮官、だ。今の私は、お前達に対する権限は、何もない」
「いいえ! 我々が従うのは、張コウ将軍ただお一人です。おい、みんなを集めろ!」
「お、おい! 誰もそのような事は頼んでいないぞ」
彩が叫んだが、兵士は頭を振る。
「頼まれなければ動かない、我らはそんな考えは一度たりとも持った事はありませんよ。張コウ将軍が信じた太守様なら、我々だって信じますよ」
「お、お前ら……」
そうしている間にも、騒ぎを聞きつけたのか、元義勇軍の兵達も駆けつけてきた。
「土方様! それに、張飛様まで」
そして、韓馥の兵共々、次々に集まり出す。
結局、何百という兵が集まり、人海戦術での竹簡運搬が開始。
絶望的な多さに見えた山も、流石にあっという間に片付いた。
……その分、執務室が文字通り、埋め尽くされてしまったのだが。
「皆、ご苦労だった。この通りだ」
頭を下げた私に、
「殿、お止め下され。これは、私が好きでした事」
「そうそう。お兄ちゃんは気にする事ないのだ」
兵達も、皆笑顔で頷いている。
本当に、私はよき仲間を得たものだ。
……さて。
皆が去り、執務室を埋め尽くす竹簡の一つを、手に取った。
広げて読み進め、ふと手が止まる。
落款とは、印の事。
……だが、私にはその印がない。
それに、何処にどのように印を押すのか。
何一つ、聞かされていない事に、今更気付くとは。
尋ねようにも、文官は皆、引き上げてしまっている。
古狸共には、聞くだけ無駄であろう。
……ううむ。
頭を抱えていると、
「旦那、いるか……って、何じゃこりゃ」
呆れながら、嵐が顔を覗かせた。
「全て、私の落款待ちの竹簡だ。しかも、悉く急ぎとの念押しがあった」
「やれやれ、あの阿呆共の嫌がらせか。しっかし、やり方が本当に陰険だな」
そうだ、嵐に尋ねてみるとするか。
「嵐。すまぬが、私は落款の事、何も聞かされておらぬ。様式も含めて、な」
「……そっか。旦那は引き継ぎなしに、いきなり太守になったんだっけ。じゃ、おいらが教えてやるよ」
そう言って、嵐は竹簡の一つを広げる。
「旦那、落款自体はどんな物か、知ってるかい?」
「私の国では、印の事を指していたが。嘗ては、花押であったようだ」
「ああ、それそれ。印を使うのは、陛下とかごく一部の人だけでね。郡太守だと、花押が普通だね」
ふむ。
印が必要となれば、その日数が必要になるが、それは避けられたようだな。
「それで、書簡の最後。その部分が、落款を記す場所になってる」
「様式は?」
「昼行灯は、姓と字にしてたけど。旦那は字がないんだよね? だったら、姓名で
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