星屑の覚醒
6 怒りと恐怖
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。でもそれが無かったら、あなたはただの人殺しになってしまう」
「構わないよ」
「それはあなたたちを襲った連中と同レベルにまで身を落とすことに繋がる。あなたが誰よりも忌み嫌う人と同じ存在になるのよ?」
「....」
彩斗は黙り込んだ。
ただひたすら怒りで記憶を封じ込めていく。
もう後には引けない。
だからこそたとえ、この少女の言い分が正しいとしても後戻りは出来ないのだった。
だが彩斗は自分への救いを与えようとする少女にこう言った。
彼女が初めて会った時からずっと、あまりにも悲しそうな表情を浮かべているのだ。
彩斗は自分でも情けないが、彼女に優しく接した。
それは自分の中の優しさが捨てきれていないということの証明だ。
「君...寂しいのかい?」
「...ええ」
「じゃあ、ここで良かったらいていいよ。どうせ僕の心の中だ。ずっと僕なんかの心になんていたくないだろうけど、寂しいなら一緒にいてあげる」
「...嬉しい。でもどうして?」
「...僕も寂しいからかもしれない。メリーにもミヤにも会えなくなって...」
「じゃあ喜んで」
少女は小鳥のように微笑み、その場から姿を消した。
そして彩斗はとうとう自分の記憶を封じ込めた。
『どうだ?』
目を覚ますと、あの教会の中だ。
日が登り、朝になっていた。
黒いカーテンで光は遮られているが、僅かに入る光が、朝であることを自己主張していた。
空腹と尿意に襲われる。
「ああ...抑えた。もう大丈夫なはずだ」
彩斗は何度も深呼吸を繰り返し、怒りを込み上げ過ぎたことによって、上昇した拍数を整えていた。
汗も大量にかき、シャツも脱いでしまいたかった。
だが黒マントの男がいつものように着替えと食事を運んでくる。
そして彩斗はそれにありついた。
「そういえば、どうしてここは地図に載ってない?これだけの教会が地図から抜け落ちるっていうのは少し違和感がある」
『我々のようなならず者が入り込めるほどに、この街の腐敗が進んでいるということだ』
「でも誰から森に入ってここを見つけたら...」
『君に渡した封筒と手紙があるはずだ。それからは微弱な電波が出ている。それによってこの協会を包む視覚操作電波を受けずに済むのだ。つまり我々が認めた者しかここに来ることは出来ない』
彩斗はダークネスが何者なのかについては全く触れなかった。
恐らくは自分と似た境遇を持っているのだろう。
「2日前の君たちの話だと、僕のような人の前に現れるんだろう?どうして?」
『共に戦う仲間を探している。闇を恐れず、悪となっても善を成す。法から見れば悪であっても正義を全うする。そんな人間を』
「僕にそれがあると?」
『そうだ。君は一般的な価値観と、特殊な価値観を持っている。
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