星屑の覚醒
6 怒りと恐怖
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「........ハァ...フゥ...」
彩斗はあれから2日間、瞑想を続けた。
まるでダークネスから超音波状の催眠術のようなものを受け、自分の精神の底に落ちる。
そして自らの恐怖を抑えこもうとするのだった。
「....もっと...もっと」
自分の精神の底は恐ろしいまでに冷たい世界だった。
海の底だ。
まるで石油を運輸していたタンカーが事故を起こして、石油が海を汚染してしまったくらいに淀んで光など無い世界だ。
そこでひたすら自分の恐怖を打ち消すために激しい怒りで記憶を抑え込む。
自らの暴力への恐怖の原因、それは数年前のあの公園での出来事。
いじめられている少女を救うべく、初めて暴力を振るったあの日だ。
他人事と思えなかった。
あの少女の痛みが自分の痛みに感じて、身体が動き、結果として殴り倒した。
だがそれによってか弱いはずの自分でも殴れば善悪を問わずに人を傷つける。
それに恐怖を感じた。
それ以来、やり返そうとした段階でそれが思い出され、拳が止まる。
つまりその記憶が無ければ、自分は悪と戦う術を手に入れられるのだ。
怒りで恐怖が押し込められると分かった今では、必死に憎み、その記憶を押さえつけていた。
もう一息というところだった。
だがそんな時、声が聞こえた。
「あなたは本当にそれでいいの?」
「!?」
彩斗は振り向く。
自分だけの世界に自分以外の人間がいた。
そしてその人間には見覚えがある。
「君は...あの琥珀に触れた時に見た...」
少女は甘音色の長い髪にラベンダー色のスカートにピンクのYシャツ、そして大きめのリボンという外見に特徴的な蝶型の髪留めをつけていた。
前に"例のメール"に添付されていた『Memory』に触れた時に一瞬だけ垣間見たあの少女だった。
名前も知らないし、素性も知らない。
だが確実に自分の意識の中に存在していた。
「あなたは自らの記憶を抑え込むことで、恐怖に打ち勝とうとしている。でもそれはあなたの優しさの否定よ。あなたの一番の魅力は優しさ....それを捨てる勇気があるの?」
「...捨てなければ、この街では生きていられないよ。ミヤの敵も討てない」
彩斗は少女との会話を始めた。
だが彼女は自分を止めようとしているとすぐに分かった。
「あなたは昔、セレナードというナビに会ったことがあるはず」
「...どうしてそれを?」
「あなたはセレナードをどう思ってる?」
「恩人だ。あんなふうに誰かを助けられるのは凄いことだと思う」
「セレナードだって誰にでも救いを与えるわけじゃない。あなたはそれを超える優しさ...慈悲の心を捨てる
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