犠牲よりも大きいもの
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、俺に従えとでも言ったのだろう。そんな相手に補給線を潰して勝ったところで何の意味もない。あえて、彼が望む正面決戦を受けて、完全に殲滅戦を演出したってことだろう」
言葉を失った三人の中で、手元のコーヒーを回す。
「簡単に見えるが、ワイドボーンを相手にして殲滅戦を君たちはできるかい?」
リピート再生によって、コンソールではワイドボーンの横並びの艦隊がまるで機械のように縦並びへと変化する様子が映し出されていた。それも待機中ではなく、戦場でだ。本来ならば向かうべき艦隊が破壊されれば、即座にそれの代替えを用意してなるべくように動きを変える姿は、天才との名前に遜色ない。
その天才と小細工なしに正面から立ち向かえる自信は――。
「少なくとも僕では無理だよ。もし、これが出来るとすれば、ヤンくらいだろうね。もっとも、彼にとっては正面から戦うという行為に何ら意味がないと思うだろうけど」
そんな完璧に見えた鋒矢の陣に対して、中央を犠牲にしながらも包囲殲滅を完成させる。
誰もが言葉もなく、コンソールを覗き込む様子に、ラップはコーヒーを飲んで、微笑を浮かべた。
「何を驚いているんだい。君たちは、まあ、僕もだが――そのワイドボーンとマクワイルド二人を相手にして戦うことになるかもしれないんだよ?」
顔をあげた四人が心底嫌そうな顔をした姿に、ラップは声をあげて笑った。
「何が面白いんですか、ラップ先輩」
「心強いことじゃないかい。優秀な人間が同僚や後輩がいると言う事は――そして、敵が強いほど、きっと僕たちも強くなれる。間違えてはいけないよ、戦術シミュレーターは評価のためにあるわけでもないし、ただ戦術だけを学ぶだけではない。ま、それは学業全てに言えることかもしれないけれどね」
+ + +
顔合わせから一週間。
最上級生不在のままに、会議という名目の時間が過ぎていく。
殲滅戦の印象は思いのほかに強かったらしく、元々友人といってもスーンとフェーガンを含めて数名しかいなかったが、輪をかけて話しかけられる事は少なくなった。それは、チームメイトも同じようで、ローバイクもテイスティアも離れた位置でずっと黙っていた。三学年のコーネリアもまた一度謝ってからは、こちらを遠目に窺うだけにとどめている。既にチームとは名だけで、崩壊していると言ってもいいのかもしれない。
広くないとはいえ、四人には余りにも広い空間。
後方にアレスが位置し、他が窺うように先頭で座っていた。
話す言葉もなく、ただ黙り――そして、食事の時間に解散する。
それを一週間ばかりもすれば、いい加減飽きてくる。
とはいえ。
――ここでチームをワイドボーン抜きでまとめたとすれば、戦った意味がない。
正確に言えば、鬼とまで呼ばれて殲滅戦を演出した意味が
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