暁 〜小説投稿サイト〜
城宮さんの天下取り
一章 Experimental Results
No.1 新しい家族。
[5/5]

[9] 最初 [1]後書き [2]次話
ている、弟を見て微笑む。

「どうしたんだ」

 多少慣れてきたのか、顔はゆるくなっているものの、相変わらず楓の口調はどこかぶっきらぼうだった。
 それにいまだ慣れない凪は、相手にビクビクしながら、思ったことを口出す。

「ごめんなさい」

 謝られたことに対して楓は思いを巡らせる。
 けれど凪に謝られるよな事をされた覚えもなく、最初と同じように状況になっているのかと考えた。
 故に楓は前と同じ質問をした。

「お前は謝るようなことをしたのか?」

 それに対して、凪は前言を撤回しなかった。
 楓はそれを見て何事かと凪を覗き込む。
 そこには力強い瞳があった。
 謝らなければならないという、明確な意思があった。
 最初に出会った頃、怯えてあやふやな言葉を口にした、そんな凪はそこにいなかった。

「お姉ちゃんを守れなかった。男なのに……」

 その言葉を聞いて楓はなるほどと思った。
 男という生き物が、無駄にプライドを持っているというのは楓にもよくわかる。
 今まで楓が付き合ってきた男も、プライドばかりが高くて困ったものだった。
 とはいえ、そのおかげで実験の検体に困らなかったので、助かったのも事実だ。
 しかし、と楓はそこまで考えて思う。
 凪のプライドは、そこら辺のちゃちな男の持つプライドではない気がするのだ。
 強者に向かっていく気概、守るという強い意志、そして涙を流せるその純真さが、今まで出会ってきた男たちとあまりに違いすぎる。
 そのまっすぐさは、いつか仰ぎ見た伝説のヤンキー、辻堂真琴に似ているとさえ思ってしまえるほどだ。
 そこら辺のヤンキーと一緒にする方が失礼だと、楓はそう考えを正す。

 楓は謝る弟を見て決心した。
 弟は私が強くすると。
 薬瓶を握り締めて。
[9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ