一章 Experimental Results
No.1 新しい家族。
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ている、弟を見て微笑む。
「どうしたんだ」
多少慣れてきたのか、顔はゆるくなっているものの、相変わらず楓の口調はどこかぶっきらぼうだった。
それにいまだ慣れない凪は、相手にビクビクしながら、思ったことを口出す。
「ごめんなさい」
謝られたことに対して楓は思いを巡らせる。
けれど凪に謝られるよな事をされた覚えもなく、最初と同じように状況になっているのかと考えた。
故に楓は前と同じ質問をした。
「お前は謝るようなことをしたのか?」
それに対して、凪は前言を撤回しなかった。
楓はそれを見て何事かと凪を覗き込む。
そこには力強い瞳があった。
謝らなければならないという、明確な意思があった。
最初に出会った頃、怯えてあやふやな言葉を口にした、そんな凪はそこにいなかった。
「お姉ちゃんを守れなかった。男なのに……」
その言葉を聞いて楓はなるほどと思った。
男という生き物が、無駄にプライドを持っているというのは楓にもよくわかる。
今まで楓が付き合ってきた男も、プライドばかりが高くて困ったものだった。
とはいえ、そのおかげで実験の検体に困らなかったので、助かったのも事実だ。
しかし、と楓はそこまで考えて思う。
凪のプライドは、そこら辺のちゃちな男の持つプライドではない気がするのだ。
強者に向かっていく気概、守るという強い意志、そして涙を流せるその純真さが、今まで出会ってきた男たちとあまりに違いすぎる。
そのまっすぐさは、いつか仰ぎ見た伝説のヤンキー、辻堂真琴に似ているとさえ思ってしまえるほどだ。
そこら辺のヤンキーと一緒にする方が失礼だと、楓はそう考えを正す。
楓は謝る弟を見て決心した。
弟は私が強くすると。
薬瓶を握り締めて。
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