第十三話 馬鹿な科学者だったんです
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ハードウェア、ソフトウェアの観点から防ぐ手段の検討が必要であると……」
「……つまり真実が明るみになった……」
ヴァレンシュタインが頷いた。
「二重に失敗でした」
「二重?」
問い返すとヴァレンシュタインが頷いた。
「あんな事を書くべきでは無かったんです。あれがどれほど危険な内容を含んでいるか、ちょっと考えれば分かる事でした。それを書いてしまった。多分初めて書く戦闘詳報に舞い上がっていたんでしょう。自分が何を作りだしたか分からない科学者と一緒ですよ、出来上がったものは人類を滅ぼしかねない核兵器だった……」
口調が苦い。
「もう一つの過ちは?」
「提出する時期が遅れた事です。あの二人は早い段階で戦闘詳報を統帥本部に出しました。だが私は遅れました。補給物資の確認、損害状況の確認で遅れたんです。私が兵站統括部に報告書を提出し、その報告書が統帥本部に届けられた時には統帥本部はあの味方殺しは不可抗力だったと判断し公表した後でした」
溜息を吐く音がした。フィッツシモンズ少佐が首を横に振っている。
「統帥本部は混乱しただろうな」
「パニックになったでしょうね。おそらくイゼルローン要塞に問い合わせ事実関係を確認したはずです」
「真実を知って激怒しただろう、上層部というのは嘘を吐かれるのを、騙されるのを何よりも嫌がる」
「でしょうね」
今度は俺が溜息を吐いた。
「それで卿の作成した戦闘詳報はどうなった?」
「握り潰されました」
「馬鹿な、戦闘詳報を握り潰したのか?」
「ええ、そうです」
ヴァレンシュタインは水を飲みながら事もなげに肯定した。有り得ない、また溜息が出た。
「あの戦闘詳報が公になればイゼルローン要塞の防衛体制の見直しという事になります。具体的には要塞司令官と駐留艦隊司令官の兼任です。この要塞司令官と駐留艦隊司令官の兼任案ですがこれまでにも何度か提案され却下されてきました」
「高級士官の司令官職が一つ減る事になるからな」
最前線の司令官職、軍人にとってこれほどの役職は有るまい。それが一つ減ればどれだけの影響が有るか……。
「却下した人間には現在の帝国軍三長官も入っています。となれば味方殺しの一件、最終的な責任は帝国軍三長官にも及ぶでしょう」
「なるほど、ミュラーが沈黙した理由はそれか……」
ヴァレンシュタインが頷いた。現時点でもその一件が公になれば帝国軍三長官は失脚するだろう。そうなれば誰がブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯を抑えるのか、帝国は内乱に突入しかねない……。まさに核兵器並みの爆弾だと言えるだろう。それをヴァレンシュタインは作ってしまった。
「帝国軍三長官が激怒したのもそれが大きいでしょう。クライスト、ヴァルテンベルクの両大将が私の意見を真摯に受け止めていればあの惨劇は防
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