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銀河英雄伝説〜悪夢編
第四話 芸を仕込むのも容易じゃない
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混戦になれば艦隊運動に不安のあるグリンメルスハウゼン艦隊は危険だ。エーリッヒも表情が渋い。
「このままの状況を保ってくれれば良いんだが……」
「止めることは出来ないか」
エーリッヒが渋い表情のまま首を振った。

「我々の事を見殺しにする、あくまで反乱軍はトール・ハンマーで叩き潰す。そのくらいの冷徹さを発揮してくれればとは思うが……、側面を突けば簡単に反乱軍を分断出来るんだ、難しいだろうな」
こっちまで表情が渋くなった。

三万隻の反乱軍を分断できる、抗し難い魅力だろうな。そうなったら一旦兵を退くしかないか。混戦に巻き込まれず遠距離からの砲撃戦に専念する。その方が行動の自由を確保できる。上手く行けば予備として最終局面での勝利を演出できるだろう。

「駐留艦隊、反乱軍の側面を突こうとしています!」
「イゼルローン要塞から味方が出撃してきます!」
オペレーターが報告すると艦橋に歓声が上がった。誰もが勝利を確信したのだろう……、溜息が出そうだ。

「反乱軍、予備部隊を出してきました!」
やはり予備を出してきたか……。オストファーレンの艦橋がどよめいた。敵味方の全戦力が戦闘に入ろうとしている。今度は決戦、とでも皆は思ったか……。残念だがこれから始まるのは混戦だ。

駐留艦隊が反乱軍の側面を突く、そして要塞から出撃した帝国軍が反乱軍の予備部隊と交戦し始めた。それを見てエーリッヒがグリンメルスハウゼン提督に声をかけた。
「閣下」
「何かな、参謀長」
暢気な声だ、何も分かっていない。

「艦隊を後退させては如何でしょうか、このままでは混戦に巻き込まれ艦隊行動の自由を失ってしまいます」
皆が顔を見合わせている。不安そうな表情だ、混戦には自信が無いのだ。グリンメルスハウゼンはスクリーンをじっと見た。

「総司令官閣下はどう思うかのう」
「我が艦隊が総司令官閣下の予備になるのです。自由に動かせる部隊が有るというのは何よりも心強いはずです」
“そうするかのう”と呟いてグリンメルスハウゼン提督が頷いた。

エーリッヒがオペレーターに後退命令を出すと艦橋には残念そうな空気と安心した様な空気が流れた。グリンメルスハウゼン艦隊からの攻撃が無くなると反乱軍は駐留艦隊との戦闘に専念出来る事になる。もっともこちらから受けた損害は決して小さくない。

短時間だが一方的だったのだ。最低でも五千隻以上は失ったはずだ。そして駐留艦隊には側面を突かれている。艦隊を再編しつつ駐留艦隊と戦うのは容易ではないだろう。

「これからどうする?」
このままではグリンメルスハウゼン提督の功績は中途半端だ。そして戦況も混沌としかねない。
「一応手は考えて有る。だがそれを行うにはミュッケンベルガー元帥と打ち合わせをする必要が有る」
「元帥と?
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