第三幕その二十九
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は一体?」
「何ですか?」
「貴方達のドイツのマイスタージンガーを讃えるべきなのです」
これがザックスの主張であった。それは当然ながらベックメッサーも聞いている。
「そうすれば気高い精神を維持できます。貴方達がマイスタージンガー達の働きに敬意を捧げて下さればこの神聖ローマ帝国が靄の如く消え去っても」
「そうなろうとも」
「聖なるドイツの芸術が我々の手に残るでしょう」
「では私は」
「御願いします」
ヴァルターのその両手に自分の両手を置いてのザックスの言葉であった。
「どうか。ここは」
「わかりました。それでは」
「ザックスさん」
エヴァはここでまた冠を出してきていた。ポーグナーから手渡されたその冠はヴァルターと同じ絹で作られた花の冠であった。それを出して来たのだ。
「どうかこれを」
「有り難う。それでは」
「では騎士殿」
「はい」
ヴァルターもまたポーグナーに応える。そうしてその首に黄金の首飾りをかけるのだった。そのうえで二人はザックスに確かめられた。
「貴方達のドイツのマイスタージンガー達を敬愛し。そうして気高い精神を保つべき」
「そう。マイスタージンガーの働きに敬意を捧げてくれれば」
民衆達も言うのだった。マイスタージンガー達も。何時しかマイスタージンガー達はザックスを自分達の中心に置いていた。
「神聖ローマ帝国が消え去っても聖なるドイツの芸術が我等の手に残る」
「書記さん」
彼等の声の中でポーグナーに案内されて彼等のところに戻ってきたベックメッサーがザックスの前に来た。
「貴方もまた」
「ええ。そうですね」
ベックメッサーも今は穏やかな笑顔だった。そうしてお互い同時に手を差し出し合い。
そのうえで手を握り合うのだった。彼もまたマイスタージンガーであった。
「万歳!ハンス=ザックス万歳!」
「ニュルンベルグのマイスタージンガー万歳!」
皆がそのザックスを讃える。祭は歓喜の声の中で栄光に包まれるのだった。
ニュルンベルグのマイスタージンガー 完
2009・4・27
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