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『ステーキ』
新しい場所
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幸いにもこの『ビリビリ』は、僕の意識に焦げ付かない。テンションの高い人たちは、こいつに触れているのだろうか? いや、彼ら自身がこれなのではないだろうか。吉之は、今までの人生を、この『ビリビリ』との闘いだったのではないかと思った。「僕はこの不快な感触を、知らぬ間に吸い込んで、世の中に辟易していたのではないか」
 吉之は深くため息をついた。家に帰って創作をしよう。

 
「羊飼い」

大きな人は
その胸にオオカミを飼っていて
彼の遠吠えをよく理解し
 それを上質な万年筆のような舌先で
 さらさらとつむいでいる

 大きな人は
 夜、酒を飲み
 オオカミとほどよく混じりあいながら
 キンピラをかじって
 二人の牙の同じであることを知る

 大きな人は
その周りに嘘を生み出すが
 それはみな
 彼を畏れての事であり
 大きな人は満足そうである


「国境」

 羊のような僕には分らない
 国境
島国の海を
 どんな風に眺めたらいいのか
スルリと通り過ぎる道のくぼみ
 それくらいの意識でいたら
 どこかの国で
 胸に穴を開けられそうだ

 オオカミの心を持つあなたよ
 国境の線を越える時
 狩のようにピリピリしますか?

 この世の様々な境目は
 羊のような僕にも
 電気を与えるから
 あなたに訊いてしまいました

 この前
国境の事を考えたのは
 毛を刈られた時でした
 そしてまたゆっくり
 国境を忘れてしまいます


「あなたがいるから」

この砲丸は君が投げたのかねと 問うから
私の手を離れたときにはもう
それは私の物ではありませんと 答えた

君が投げなければワタクシの所に
球は飛んでこなかったのだがと 追いかけるから
あなたがいなければ
私は投げなかったと思いますよと 答える

ワタクシをめがけて投げたのかねと 詰めるから
あなたがそこにいたことと
私が球を投げた事は
同位なのですと 説いてみた

つまり問題は起きるべきところめがけて
放り投げられるということです
つまりあなたがいなければ
あなたに関する問題は起こらなかったのです

そう答えると
大きな拳が私のコメカミを
強く したたかに ぶった


 吉之は竹蔵くんに、これらを添付したメールを送った。「これをもとに、脚本書けないでしょうか?」なんだか無責任な学校の先生みたいに。「おい、イタリアと言ったなんだ? みんなバラバラの答え見つけるまで、俺なんもしねぇぞ」そんな先生、昔いたんだ。

「今まで出来たことは、当然できる。という心持で……」
 地下鉄に乗り合わせた初老の男性に、醜さが固着している。
「今まで出来たことは、これからも出来る……」
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