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『ステーキ』
サツキの話
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化。いや、細分化。誰かの理想を感じて、それに向かって進みながら、ある一点を否定するように横にステップアウト。
 きつめに運動する。疲労する。自意識が削られる。自分の肉体を正当に評価できるようになる。ゆったりとした自由。昔、押し付けられた世界は、今はもうふさわしい人に吸い込まれて、彼らがそれを崇拝しているんだ。一滴も漏らさないでね。

 はみ出した所は
 思い切り使いなさい
 魂と同じ形になるまで使えば
 世界も風を弱めるでしょう

 その言葉に救われた。昔、札幌で小さな宗教をやっていたおじさん。その人、もう、お金をもらって人を救う事を止めたのだそう。完全なる因果に入ったと言ってた。その因果、虫一匹の運命さえ導くと言う。
「人に金言吐けば、その見返り、神よりもたらされる。どうだい? この世に生きながら、神を感じる事が出来るなんて、素晴らしいだろ? 金言を導く時、私は神と一つになれるんだ。それは苦しい事だ。胸をかきむしるような苦しみの後に訪れることもある。神は万能でありながら、無能をかもし出す。さじ加減一つさ。常に万能を求めるような人間をあざ笑う感じだね。人間、ある地点を越えたならば、指先の動き一つにも意味を持たせることが出来る。神は人間をどう見ているかって? 神は人間など滅んでもいいと思っているんだよ。大事な事だけれど、それならそれでしょうがない、と。しかしながら人間が自分の可能性を求めるように、神も世界の端っこまで血液を送る事を考えていらっしゃる。人間の知性は時として血行不良をもたらすからね。果たしてどうだろうか? 人間は自分の事を大事に思うけれど、神は違う見方をしているって事をみんな知っているだろうか? 自分を大事にするあまり、肥大したり、攻撃的になったりする。そして、神はそのすべてを、うまく使って料理してしまうんだよ。焼かれないうちに私の事を知ってくれてよかった」
人間の世界は、神の支配するあの世の写し絵なのだそうだ。人間の階層社会なんて、まるで写し絵だ。人間は感性が完璧ではないから、間違った順位付けをしてしまうけれど。その間違いで神は怒るらしい。おじさんはそれを少しずつ直す。

 ベーグルが温まった。それをむしって、むつかしい名前のチーズを塗って口に入れた。サツキは照明の照らす天井の紋様を見た。『ロココ』という内装業者に頼んだものだ。
「どうして物は、意味をなくすのだろう」
「ああ、私の一部になったからだ」
「そしたら、この紋様の魅力は、いま私の中に」
 家を出るとき、少し地味な靴を履こうとして悩む。地味を選んで幸運を逃す? 気にならない程度の、慣れた物を選んで、正気を保つ? それ、風を感じよ。

 街でナンパされること数度。
 一度もついてゆかず。
 両親とも公務員。
 定期的に性交。
関係のある男、すべて
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