サツキの話
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人生なんてやって来ないんだから。
「あなたが…私の生まれ持った愛を…つなぐ…向こう側につなぐ希望? 好きとか嫌いじゃなくて、遠くまで正しき穴を掘る力が…例えば私の愛に意味があるなら、それを…この放埓な世界じゃなくて、ずっと遠くの世界に…誰にも壊されない所まで、運んでくれる…私の中からつるりと確かな世界に」
初めての告白だった。そのとき知ったんだ。心を殺さなきゃ上手くいかないんだって。この告白を通り抜けた後に、世界は広がったんだ。
中学の頃、坊主頭で顔に小さな斑点がプツプツある男子が、勇気を出して告白していた。私には関係がないから、隠れて冷やかしの笑い。それと同時に、意識を廻るあたたかい空気。何がどう反応したのかしら。身体の隅々まであたたかいじゃない。あの男子の恋心は醜い? 醜いから、色々な寒いモノを集めて、私に襲いかかっていた寒いモノまで吸い込んで、私の身体があたたかい? それとも生まれつきのコメディアン? 偶然見てしまった排泄の現場みたいに興奮した。ああ、もう考えない。考えたら呪われそうだもの。いや、でも私、そんな人じゃない。私のこと好きになった男の子が、女友達に笑われたら、足がすくむほど怖かったんだもん。そんな人じゃない。
今はもう無いインテリアショップで買ったソファに横たわる。私が買ったからその店は潰れた? ううん、私が買ったから店のオーナーはもっといい案を思いついた。それでいい。自分自身が愛の通り道であり、ひらめきであるような心持で、張りのある弾力を楽しんでいる。
小さい頃、大人の都合で、正義が塗り替えられた。思春期に、定まった心を忘れて、大人になるまで、それはずっとずれたまま。身体と心のバランスを崩したから、すごく醜くなった。外見は可愛かったから、誰も理解してくれなかった。世界の上澄みで生きたかったから、暗い顔なんてしなかった。身体の少し歪んだ所から、不幸がじわじわ染み込んだ。自分の人生がどこか遠くを歩いているような気がした。身体からエネルギーが抜き取られる。走って追いかけて行きたいのに、目標が定まらなかった。外の世界は、私の力で好もしくないものに変わっていった。
身体を歪める価値観に縛られる程、意識はそれを飲み込むように大きくなる。そのとき見た、真面目なクラスメイトから出ていた、清らかな魅力。正しさは誰かに口に出されたそばから、形を変えて、急いでそのクラスメイトに吸い込まれに行った。大きくなった私は、自分を肯定していいのか迷っている。私を大きくしたのは、正義を口にした先生? それとも、それを受け入れたあなた? 私の口に合わないの。出て行ってくれる?
窓から差し込む太陽の光が、まっすぐ伸ばした指先を包むように流れている。水泳の泳法だって、誰かの考え出した、シェイプされた価値観なんだよなぁ。進化。私の肉体でクロールが進
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