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『ステーキ』
サツキの話
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分らない』と話し、警察が得た情報では、『彼に情報を提供した人物は、既に不法滞在で、本国ロシアに送還されており、行方がわからない』と言うことです。警察は引き続き交友関係を調査して、事件の解明を急ぐと共に、麻薬密売ルートをロシア警察と協力して調査すると言うことです。以上6時のニュースをお送りしました。この後は各地の天気です」

サツキは「なかなか、誠実にやれたじゃない」と、自分を
褒めた。吉之さんがいると、緊張感ある。告白を断ったら、なかなか緊張感があって誠実になった。これはこれでいいかも。
「サツキちゃん、喋れるんだからテレビの仕事しない?」女
社長が言う。「そしたら、うちの若い子の道も拓けるしさぁ。
なんだかんだでおっぱいと顔よ」
この女社長に説かれると、なんだか悪寒がする。近いうち
に、この事務所のスタッフにしてもらって、安定したお金を手に入れたいのだけれど。事務所の奥まったところ、物置になっている所で、別のシーンの撮影が始まっている。壁に借りてきた漫画を並べて、テレビの漫画特集の中身を撮っているみたい。

「世の中とつながるって、僕は難しいと思うんですよね。自分の芯を露にして、正当な評価をされることって、ホントまれな出来事で、僕の作品も、的外れな評価をされても、『まぁ、自分の本意はばれてない』って、ほくそ笑んでしまうんですよね」
「この作品の中でも、『野球が好きなわけじゃないから』って言って、逃げる主人公がいたり、『自分みたいな男になるな』って息子をたしなめる父親がいたり。ですよね」
「自分、子供とかいないんですけど、『もう俺は大人だから』と言ういい訳? 責任逃れ? そのゆるさから脱して、本気で野球にのめり込むことで過去を振り返る。若かった時の劣等感を思い出して、父親として柔らかくなってゆく様とか、なんと言うか、受け継がれなかった才能とか、もはや失われていった物への鎮魂も含めているんですけどね。自分の芯をむき出しにすることで、こう……、子供を持って、夢を見る当事者という責任を、もう受け渡しながらも、内外から親子関係がシェイプされてゆくのが面白くて」
「しょっちゅう失策をするお父さんを見た男の子が、『アルバイトさせてください』って言うシーン。私はその子に『男』を感じましたね」(笑)

 このシーン、竹蔵くんが即興で脚本を書いたらしい。シンジ君がテレビのチャンネルをニュースから変えると、一瞬だけ流れる映像。こんな物も作らなきゃいけないんだね。かんばってね、竹蔵くん。少し早漏だけど。カントクと出会ってたくさん自主映画を観た。それで分った。カントクちょっと才能あるじゃん。だからちゃんと言う事聞くよ。

「芸術って、足を踏み入れるときすごく照れるのよね」カスミちゃんが電話をかけてきた。
「今、車の中?」と、訊いたら「うん」と言っ
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