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『ステーキ』
サツキの話
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に歩いて行った。
「マンホールの原理か」
 下半身を出して、四つん這いになり、財布の中のコインを取り出して、肛門に押し当てた。粘りのある便が指を滑らせて、なかなかうまくいかない。
「縦にしちゃいけない。蓋をしなきゃ」
「ああ、札か……」
 増藻は財布の中から札を出して、一枚ずつ肛門に詰めていった。穴から出ようとする力と、それを塞ぐ力が押し比べをして、爆発的な圧力が生まれた。増藻の尻の穴から、勢いよく、濡れた札のかたまりが飛び出していった。それは大きな通りを走る一台のポルシェのオープンカーに当たった。大丈夫。大丈夫。増藻の頭に誰かの声が響く。「何が大丈夫なのだろう? 俺の肛門括約筋のことか?」
 ヤシの実みたいな肌色の男が増藻の腹を蹴っている。
「ファッキン・ジャパニーズ! ファッキン・ジャパニーズ!」
 四度目に腹を蹴られたとき、増藻は自分の目が飛び出したような気がしたが、多分それは気のせいだろう。

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