暁 〜小説投稿サイト〜
『ステーキ』
伝説のイトウ
[7/7]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
痛くなる。米神が張りつめて、緊張する。この経験をすると、なぜ日本人の元気がなくなったかを知る。魂が小さくなると、本来働くべき心の脈に血液が廻らないのだ。いざ大きくなったとき、心の脈の使い方を誤るから、すぐに縮んで元のように小さくなる。
時間は午前十時。吉之という男がセックスをしている。頭上の人曰く、「二回戦まで行くぞ」
 私は何も抵抗せず体の感覚に神経を尖らせていた。何かのタイミングで脳髄が雨を押し上げる。身体に爽快な感覚あり。苦痛の中に愛。この力がありながら、今まで童貞? 確かに救うべきだったのだろう。未来が感じられる。苦痛に耐えられる。これは良き男の良きセックスか? 三十分して尿意。耐える。数分後、「良い」と、頭上の人。排尿。「豪快にイったね」
 吉之という男の声らしきもの。
「これが女か、スゲェ……」何度もつぶやく。「こんなに長い時間入ってる」

 イトウはその夜、M銀行のATMで宝くじを買った。見事に当たった。頭上の人は、「循環した」と言った。
「循環? 何の?」と問えば、「幸福の循環」と答えがあった。
 イトウは長いため息をついた。劣化して伸びきった風船みたいなため息だった。
「不幸の後に幸福がやって来るってのは、なかなか幸せな事じゃないか。この言葉はな、感じる人間にしか当てはまらない。つまりだ、不幸を身をもって感じなければ、幸福はやって来ないって話だろ? じゃぁ不幸の只中にあってそれを感じない奴は、そこから這い出すことが出来ないってことも同時に言っているんだ。純粋な不幸が訪れ、それを正しく痛みとして感じる人間には、真っ向から闘う心が宿っている」誰かが喋っている。イトウはそれを聞きながら、「幸福の後にやってくる不幸よりは輝くだろうな」と、つぶやいた。

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ