自主映画
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のあるときになんだか指先で世界を描ける、みたいに……すべてがなすがままの世界の中で、少し自分色を出せるっていうか」
「幸運の正体は分っているの? 俺に言わせれば、悪い男のチンチンを勃てなければ幸運だよ。おれ自身の経験だけどさ、悪い性欲と心地いい性欲があって、悪いやつは前立腺で分るんだ。いや、自分がまったく良い男とは言わないけどさ」
女の子は少し黙っていたから、すごい勃起の話をした。
「それがさ、吉之のチンチンが凄い事になってるの。凄いの。えっ? それが悪なら全部使い切っちゃってよ。ヴァンヴァン燃やしちゃってよ。二度と出来ない位にさ」少し悪い感じで言い切った。こういうときにはキレが大事だ。キレのある言葉はあやふやな感情を一時的に吹き飛ばしてくれる。俺が演出で学んだことだ。女の子はイエスと答えた。正直、俺は勃起したチンチンに興奮する女の子の心情を理解しない。ただ単に自分と、この女の子の間にあったあの熱を客観的に理解しただけだ。
自分の体で勃起する男を、その意味を理解しないで、冷たい目で見る女がいる。意識の奥で感じるんだよな。目の前の男が悪魔にとり憑かれ、セックスに酩酊している男なのかどうかをさ。
「都合のいい女」と頭に浮かんだ。「都合がいい?」そんな言葉、悪人が吸い込んじまえ。吸い込んで固まっちまえよ。そしてこの世から消えちまえ。彼女は愛欲の導きに素直なんだ。体の奥、魂のありかに、ゆっくり大胆に入り込むことが出来る。熟練の技で線を重ね、絵描きみたいにありありとオスをあぶりだすんだ。
腹の奥にあった魂が、するりと抜けて心地よい。それは風に乗ってまた誰かを少し悪くする。こんなに醜いのかと笑われもする。それはさっきまで体の一部だったから、カントクは静かにベッドで丸くなる。喧嘩の後、みたいな静けさが包む。
シンジ君がカントクの指示に従い、ごついブーツに履き替えている。昔、悪ガキだった三人と目を合わせないように、でも視界の中にしっかり収めて吉之は思う。
自分の過去の傷が何だったか。それは今、近い未来に包まれたこの意識では理解できない。いや、理解できないのではなく、痛くないというだけだ。心の傷が産んだ頭の上の大きな甕。それを支える意識にちょっとした大人の自覚が。この甕が割れてしまうと、心の中に何が流れ込んでくるのだろう。
「触れて欲しくないよね」かつて誰かが僕を揶揄した。それに同意できるほど傷ついていたな。心の傷は時と共に癒える。それは多分、時間ではなく、誰かが運んでくる未来のことなんだな。未来があらわれると同時に過去がちゃんと過去になる。その未来が醜かったらどうする? 醜さに抗う心あらばそれもまた未来を引き寄せるだろう。体を少し鍛えておこう。少し先の未来が何かを壊すかもしれないから。
僕はこの三人とは別のモノと闘っているんだと実感する。昔、
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