第九十三話
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翌日。
軽く朝食を…いや、昼食を済ませ、箱庭を出る。
凛が持ち込んだ貨幣の内、10年前以前の年号がプリントされた硬貨で今朝の朝刊をコンビニで購入する。
聖杯戦争中なのだ。どんなに隠蔽しようとも隠しきれないそれは虚言として大衆紙に載るだろう。ただ、そこから真実が想像できるかはこの聖杯戦争を知らなければ分からない事だ。
「ハイアット・ホテルの倒壊だって。事故原因は調査中って書いてあるけど、これって…」
「十中八九マスターを狙ったマスターの仕業でしょうね。どんな宝具を使ったのかは分からないけど、綺麗にぶっ壊してくれたものだわ」
なるほど。ビル一つ壊しておいてあくまで事故として処理できるレベルの戦いだったと言う事か。
「奇跡的に死傷者はほぼゼロ。行方不明者はおそらくマスターとその関係者だけでしょうね」
「なるほどね」
「私が気になっているのは寧ろこっちね」
「この幼児失踪事件か?」
「ええ、思い出したの。私はこの時、この事件を追っていた。その時に怪異に出会ったわ。あれは間違いなく聖杯戦争関係だったわね。つまり…」
「マスターかサーヴァントが幼児を誘拐していると言う事か」
「ええ。そして誘拐された幼児は誰も帰ってこなかった。そう、コトネも…」
おそらく助けられなかった誰かが居たのだろう。それが彼女に小さなシコリを残しているようだ。
自分の知っている過去に干渉する。
それがもたらす葛藤を俺は知っている。多少違うが物語に介入するイレギュラーとしての関わりが自分に何をもたらしてきたのかも。
しかし、俺は彼女達の行動を尊重しよう。経験者の言では関わらずに放っておけと言うだろう。大体にして既知の物語からの逸脱は悪い方へと向かうのだから。
しかし、これは彼女達が考え、行動するべき事。俺がするのはその手助けだけだ。
「イリヤ、どうするか決めた?関わるか、関わらないかの選択は早い方がいい。これは年長者からの教訓だ。後手に回ると事態を好転させる事は難しくなる」
「まだ、わからないわ…どうしたら良いかなんて。…わたしだって理屈では分かってる。あのお母様はわたしのお母様じゃないって事くらい。…でも」
「イリヤスフィール…そうね。お互いこの聖杯戦争で肉親を失っているのよね」
「リンもなの?」
「ええ。お父様はマスターとして聖杯戦争へ参加した。お母様は聖杯戦争に巻き込まれて精神に多大なショックを受けてしまったの。…私の存在を忘れるくらいに…」
聖杯戦争は基本は殺し合いだ。そこで行使される陰謀術数の数々はそれは普通の人なら目をつぶりたくなるような物ばかりだろう。
「今なら助けられるチャンスも有るわね」
「ええ、有るわ。でも、それは難しい事だし
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