第九十三話
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らく間桐のマスターは彼だ。そしてこの戦争で死ぬ。
間桐の屋敷を使い魔に監視させればよろよろと歩いていく成人男性の姿が見えた。
それは既に限界を超えて魔術を行使したかのようにダメージを受け、実際体の機能も幾つも失っているのだろう。黒かった髪は何かの魔術の後遺症か白く染まっている。
そう言えば桜の髪も青く染まっていた。昔は私と同じくカラスの羽のような黒い髪だったと言うのに。
間桐邸から出た雁夜おじさんはズルズルと体を引きずりながら夜の街へと消えていく。おそらく他のマスターを求めて戦いに行ったのだろう。
しかし、どうして魔術師ではなかったはずの彼が聖杯戦争になんか参加したのか。それだけが私には分からない。
幼かった私でもなんとなく彼が魔術を厭い、嫌っていた事は感じていたと言うのに。
使い魔との共有を切り、私は夜の街を歩く。
新都を歩き回れば、淀んだ魔力がそこかしこに感じられ、気持ち悪い。
その中を私はキャスターの手がかりを求めて歩いていた。
暗い路地の裏へと続く隙間からは一層強い淀みを感じ、ぶっちゃけ近付きたくない。しかし、行かない訳にもいくまい。
そんな事を考えていると、その暗がりに入り込もうとしている少女が居た。
紅いコートを着たツインテールの少女だ。歳の頃は6・7才と言ったところか。
「って、アレ私だ…」
魔術師として魔力を感じられるのなら、自分の力を過信してあのような埒外の怪異の存在する所に自ら足を向けるなど二流のする事。余りにも馬鹿な行動に自分である事を否定したいくらいだ。
当時の私は居なくなったコトネを探して新都を探索していたのだ。
何かおぞましい物を見つけ、気を失った私が再び気が付いた時はお母様に抱きかかえられていた。泣きながら神に感謝している母親の顔を今でも覚えている。
なるほど、私はこれから無謀な行動に出るのか。いや、現在進行形か…
誰かが助けてくれるはず、と言うのは楽観視すぎる。
選択の数だけ世界は分岐するのだ。助けなんて来ないという世界だって有るだろう。
「本当、勇気と責任感だけはあったのよね、私…」
勇気と無謀を履き違えていたけれどと一人ごちて私は彼女を追って裏路地へと入った。
濃密になる死の香り。
追って入った裏路地で私はその子の肩を掴む。
「うわっひゃぁっ!?」
そんな眉根を寄せてしまいそうになる品の無い絶叫が聞こえる口を私は素早く自分の手の平で覆う。
「黙って」
うーうー唸るその子に小さく耳打ちする。
「あなたではあの影に居る物には敵わない。分かっているわよね?」
その問い掛けで彼女は私が魔術師であると悟ったようだし、自身の窮地も理解した。
自分よりも高レベ
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