第九十三話
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?」
「それは…」
少し言い辛そうにしているが、心の内を誰かに聞いて欲しかったのか、独白のように彼は語り出す。
「俺自身は聖杯なんて必要ないんだ」
「だったら何故聖杯戦争に何か参加しているのよ」
「交換条件なんだ、聖杯を渡す事が彼女をあの暗い闇から救い出すことが出来る最後のチャンスなんだ」
雁夜おじさんの独白は続く。時折相槌を入れて慎重にかれの話を聞きだした。
聞きだした後、私は頭が煮えくりかえりそうになってしまった。
「落ち着きなさい、凛」
「大丈夫、落ち着いているわ。ありがとうチャンピオン」
落ち着けるわけが無い。
だって、桜が…私の妹の桜がそんな事になっていたなんてっ!蟲に犯される責め苦によって精神まで苛んでいただなんてっ!
私が頑張れば、そう思って必死に魔術を習ってきた。私が痛い思いをした分だけ桜は幸せでいると。
でもそんな事はあるはずはなかったのだ。
お父様は何故間桐なんかに桜を養子に出したのか。…いや、それは魔術師として冷静に考えれば分かる。
私も桜も魔術師として優秀すぎたのだ。魔術は一子相伝が基本。魔術を覚えない桜では、その才能の所為で寄って来る魔に太刀打ちできない。
だが、遠坂の魔術は教えられない。だから後継者が途絶えた間桐で自分を守る術を身につけて欲しかったのだろう。そこには確かに親の愛情を感じる。
しかし…しかしだ。その結果はどうだ?
彼女は人間としての尊厳を踏みにじられ、泣くことすら止めてしまった。
私の世界の彼女はすでに抜け殻なのだろう。ああ、今思い返してみれば分かる。あれは人間を模倣していた人形だったのだと…
確かに優秀な魔術師でもあの間桐の老人には敵わないのかもしれない。しかし、サーヴァントを手に入れた後でも従っていると言う事は彼も間桐の当主には逆らえない傀儡と言う事なのだろう。そこに自由意志を見せているが、間桐の当主が切ると思えば潰える存在。
そんな彼を哀れに思う考えすら私には到底出来るはずが無い。だって、彼は桜を助けようとしているのだから。
だったら哀れみは侮蔑だ。
「そう、あなたの戦う理由は桜ちゃんと言う女の子なのね。だったら彼女が助かるのなら聖杯戦争に参加する理由は無いのかしら?」
「いや、それでも俺は時臣を許せない。おれは絶対にあいつを殺す。桜ちゃんを不幸に陥れた彼を俺は許さない」
「矛盾しているわ。桜ちゃんの幸せはあなたと居る事では無いのよ。父親を殺されて幸せになれる子供は居ない」
「え?…あっ…う?いや、そんなはずは無いはずだ…そんなはずは…」
なるほど。雁夜おじさんは既にそんなことも考えられなくなっているのか。それほどまでにお父様が憎かったのか…
自
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