マシモの話
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仕事をしていた。今は札幌で第二の人生を送っている。今まで数人の顧客を紹介した。肉体
の奉仕だ。その女は言うことをよく聴いた。東京でちやほやされてゆるんだはずの心はこの寒い街
で再び引き締まったのかもしれない。世界の底に堕ちても、その場所で独特なプライドを築き上げ
て這い上がる女。増藻はそれを尊重する、それと同時に彼女に疑いを持っていたりする。東京の大
きな人たちのスパイかも。増藻は東京を追い出された。この街で、新しいルートで仕事をしている
から、あまり探られたくない。ジャガーに乗っていると知れたら「どこから流れた金なんだ」と目
をつけられる。増藻は大きくなりすぎないように仕事をした。その女の前ではお金の匂いを消して
おいたほうがいい。
後部座席の中、光に包まれたような疲労感を感じて増藻は思う、上半身のスタミナが素晴らしい。
下半身は、サンドバッグに三度思い切り蹴りを叩き込めば意識が遠のくほどだ。女のデコルテを思
い浮かべる。少しだけペニスが膨らむ。勃起はいい。身体にいいんだ。心が太くなる。目を開けて
通りを眺めたが歩いている女の子たちの胸の谷間は拝めない。今は冬なのだし。増藻のそのナニは
日本人としてはかなり太めにできている。増藻は勃起をするたびに男としての勝ちを悟る。
「なぁ、佐古」と増藻は話しかけた。「サッカーやったことあるか?」
「インフロントキック」と佐古が返した。「昔ね、私が小学生の頃、ある先生がいまして。それが
まだサッカーが今みたいにメジャーじゃなかった頃の話なんですけどね。話していいですか?」い
いよ、と増藻が言う。「その…あの、サッカーではインフロントキックっていうのが重要なんでし
ょ? いやよく知らないけれど、それをですね、やたら教えたがる先生がいて、私たちにインフロ
ント、インフロントって教えるんですよ。そのやり方なんですけどもね、つま先を伸ばせって言う
んですよ。つま先を目いっぱい伸ばして足の甲で打てって言うんですよ。ところがですよ、つま先
を目いっぱい伸ばしてボール蹴ったら全然ボールが飛ばないのですよ。ゴルフでいうダフるって感
じで、なんか違うな、どこか違うなと思いながら練習してたんです。そしたらその先生、対外試合
しようって、隣の小学校に申し込んだんですよ。かなり自信があったんでしょうね。そしたらその
隣の小学校にサッカーの上手い先生がいて、その教え子、キックがめっぽう上手いでして、インサ
イドキック、アウトサイドキック、ヒールキックそれからインフロントね。彼らのインフロントっ
て足の親指の付け根でボールの下を擦るように蹴るんですよ。そしたらみんな、影でこそこそしだ
したんです
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