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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
第三七幕 「みんな必死に生きている」
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れてやってくる50万人近い入学希望者の中から選びに選び抜かれたメンバーの中の、更に5指に入る超天才、それが彼女の肩書だ。底辺ギリギリで合格した私とはまさに天と地ほどの才能差があるだろう。
私が飛行のことが解らず四苦八苦している間、佐藤さんはずっと空を飛び回っていた。表情は始終楽しそうで、まるで何の悩みもないと言わんばかりの無邪気な笑顔だった。
私は、それが何となく腹立たしかった。
自分のような凡人はいくら頑張っても時間が足りないほどなのに、彼女にとっては暇な時間を潰すために飛んでいる程度にしか思っていないのだろう。事実、彼女は射撃訓練も接近戦闘訓練も碌にせずにただ飛び回るだけだった。私が何とか飛行にこぎつけても、彼女は何の苦も無くISを駆り飛行し続けていた。それほど努力せずとも成績を保ち、ISの操縦も人並み以上。訓練をしないのはきっと余裕の表れだろうと私は思った。
噂によると彼女は日本の代表候補生になることを断ったらしい。それを聞いた私は、ふざけるなと叫びたくなった。代表候補生は国家代表の卵。国の期待を背負い、たとえ代表になれずとも周囲の脚光を浴びる、まさに私の憧れた存在だったからだ。なりたくてもなれない人が大勢の席を自分から蹴るなど、才能ある人間にしかできない行為だ。才能の無い私のような人間にとって、それは侮辱とも取れる暴挙にしか映らない。
そうやって佐藤さんに醜い嫉妬をして、「だから自分が出来なくても仕方がない」と自分に言い訳していた。薄々そのことに気付いていた。だがそうやって他者を貶すことによって得られるちっぽけな自己満足と自己正当化は、じわじわと沈みゆく私にとっては蜂蜜よりも甘美だった。故に止められなかった。
そしてそんな誘惑は、今日織斑先生が言い放った言葉を聞いた時に吹き飛ばされてしまった。そう、彼女は決して楽などしていなかった。才能に胡坐をかいてもいなかった。むしろ誰よりも研磨を怠らない努力の人だったのだ。そんな人を見ながら、私は何を考えた?彼女がたゆまぬ努力を続けている間、私は何をしていた?
私がこれまで、それだけは誰にも負けていないと自負していた「努力を続ける才能」が、負けた瞬間だった。
「・・・仕方ないよね?だって負けちゃったし・・・もう叶わないし追い付けないよ。勉強も手がつかない上に自分に言い訳してるような人間が、ステージの上に立つ資格を持ってるわけがないよ」
心根が折れるのを感じた。その後の実技も全く気が入らずに派手に転倒し、あれたグラウンドの馴らしをしている間もずっと空虚な関学が頭を覆い続けた。
「もう、だめだよ。これ以上やる気も起きないし、やる気も才能もない人間なんて・・・この学園にいる意味ないよね?」
もう何をするのも億劫だ。今まで一度も逃げたことはなかったんだから
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