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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
第三六幕 「遙か遠い過去からの」
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ルカ蝶”という渡り鳥のように大群で「渡り」をすることで有名な蝶の名でもある。成虫は鮮やかなオレンジ色の羽を持っており、その渡り先を見るためのツアーが存在するほどに美しいらしい。とはいってもイタリアには生息してもいなければ渡って来ることもないのだが。
髪留めの蝶のデザインはそのモナルカ蝶を模しており、おそらく名前を掛けた作成者のちょっとしたジョークなのだろう。

「モナルカ蝶、か・・・」

モナルカ蝶は身を守るために体内にアルカロイドという“毒”をため込んでいるそうだ。羽が目立つ色なのも相手を遠ざける警戒色なのだとか。まるで自ら嫌われ者になりたいみたいで、ほんの少しだけオリムラとノンネに初めて会った時の自分と重ねた。自分が思っていた以上にそれが後を引いていることに顔を顰めたが、すぐに無表情に戻る。

ふと、彼らは何を思ってそんなに長い旅路へと向かうのだろうかと思う。
先祖がそうしていたから?
より良い場所を求めているから?
そう動くよう神様に定められたから?
もし3つ目だとしたら、それは悲しい事だ。決められた役割にただ淡々と従うためだけに子孫を残し、多くの同胞と分かれ、別れ、いつ終わるともしれない繰り返しの大河の一滴として生きてゆく。それにどれほどの意味があるのだろう。神は何故、そんな永遠の苦行を彼らに与えるのか。


それとももしかして、彼らには見えているのかもしれない。
誰にも邪魔されず、誰とも関わらなくていい。世界という名の輪廻から解放される場所(どこか)が。

「・・・もしそうなら、僕も連れて行ってもらおう」

そこはきっといいところだ。誰にも迷惑を掛けずに済む。誰にも煙たがられずに済む。
誰に何を求められることもない、“あの事件”を思い出さなくていい、悪夢を見なくてもいい、ただ静寂だけが広がる安らぎのゆりかご。そこならば、もう逃げる必要も向き合う必要もなくなるだろう。

「行ってみたいな・・・そこへ。・・・ああ、でも。そこへ行くともう皆には会えないのかな?」

それは、少し寂しいなぁ。
でも、案外アングロ達やオリムラ達ならそこまで上がりこんで来るかもしれないなぁ。
ミノリなんかは何食わぬ顔で「朝だよ〜」って起こしにくるような気がするなぁ。
伯父さんに手を差し伸べられたら、断れる自信がないなぁ。

「・・・その時はもう一度ゆりかごから出て、今度こそ向き合えばいいか」

例えそれが何の実も結ばぬ定められた繰り返しだったとしても、きっとそれを乗りこえられる可能性を、僕は捨てきれないから。

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