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SAO─戦士達の物語
キャリバー編
百二十九話 おんぶとだっこ
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て……
と、サチはウルズに見せられた光景を思い出した。確か、あの映像では世界樹の根はグレートボイドまで、と言うかその周囲にまで伸びていて……

「やっべぇぞこりゃぁ、サチ!!」
「え!?ひゃぁっ!?」
「もっかいちゃんと掴まってろ!!」
引きつったような顔で言って立ち上がるや否や、リョウは全速力で走りだした。サチの足と背の後ろに腕をまわした……所謂“お姫様抱っこ”で抱えあげて。

「り、りり、りりり、りょりょ、りょう!?リョウ!!こ、これ、これ!!」
「喋んな!舌噛むぞ!良いからつかまれって!!」
言ってる内に、世界樹の根は凄まじいスピードで地表に迫って来る。バキバキと言う音がリョウの背後でしているのがその証拠だ。

「つ、つつつ、捕まるって、どこ、どこ、何処に!?」
「首!!」
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
最早どうにでもなれとサチは顔を林檎のようにまっ赤にしてリョウの首にしがみつき、目をきつく瞑った。

「うぉぉぉぉぉ!!!?」
「っ〜〜〜〜!!」
その間にも凄まじいスピードで根っこは迫る。ついに地表にその根を下ろした世界樹は、案の定それをグレートボイド……だった巨大な湖の周囲に向けて伸ばし始め、リョウの背を追いかけるようにそれらは迫る。

「うおっ!とっ!よっ、ほっ、のあっ、の、ぉぉぉぉ!!!!?」
直撃コースで迫ってきた木の根を躱し、追い越したそれの上に飛び乗って二発目を躱す。次から次へと迫る木の根をまるで猿の如く飛び跳ねながら少女を抱えてリョウは逃げまくり、木の根を躱し、蹴り、跳び超えを繰り返す。
それが遂に四十回を数えたころ、ようやく木の根の成長は止まった。

「おしっ!!っとぉぉぉ!!?」
「え!?」
と、それと同時に今までリョウが上を走っていた木の根の成長も止まり、足場が消えても勢いを止める事の出来なかったリョウはそのまま空中に飛び出す。

「う、ぉ……!!」
「わぁ……!!」
其処で、リョウと、彼が抱えたままのサチは見た。
遠く、遥か壁のあるこの地底世界の彼方までの全てが、信じられない程の緑に覆われている事に。

既に拭き流れる風は冬の冷たい木枯らしではなく、春のそよ風。
天空のただの水晶だったものが凄まじい白光を発し、世界を照らす。
大地の氷は全て溶け、地面には新芽が芽吹き、凍っていた小川は流れ、各所に有った人型邪神の砦は緑に覆われあっという間に廃墟と化す。

「凄い……!!」
「あぁ……!おわっ!?」
「わ、きゃぁ!?」
二人がそろって感嘆の声を上げ、直後、リョウは地面に背中から着地した。

「いでで……」
「り、りょう!大丈夫!?」
「お、おう、感動しすぎて体制崩しちまったわ」
ははは。と笑うリョウに、サチの顔からも自然と笑みがこぼれる。

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